以下が、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』で紹介している解説と回答です。
 AIの回答は正しいのか、確認してみましょう。

組み合わせを抽象化してみる

 2人の帽子の色の組み合わせとしてありえるのは、「赤赤」「赤青」「青青」の3パターンです。
 それぞれのパターンに合わせた回答をすれば確実に正解できますが、2人では3つのパターンをカバーできない……。
 そんなときは、

 抽象化することで、もっと少ないパターンに限定できないか

 これを考えてみます。
 すると、「赤赤」「赤青」「青青」の3パターンは、要するに「2人とも同じ色」もしくは「2人は違う色」だということが見えてきます。
 これで、結果を2パターンに絞れました。

パターンに合わせた戦略を練る

 結果を2パターンに絞れたら、あとは簡単。
 AとBで、それぞれのパターンを想定した回答をすれば、かならずどちらかが正解できます。
 つまり、Aは「2人の帽子が同じ色だった場合」の回答を、Bは「2人の帽子の色が異なっていた場合」の回答をすればいいのです。

 Aは、相手の帽子と「同じ色」を宣言する。
 Bは、相手の帽子と「違う色」を宣言する。

 という戦略です。
 これで本当にうまくいくのか、検証してみましょう。
 Aが赤、Bが青の帽子だったとします。先ほどの戦略でいくと、

 Aは「青(Bの帽子と同じ色)」と答える←不正解
 Bも「青(Aの帽子と違う色)」と答える←正解

 では、AもBも赤の帽子だった場合はどうでしょう。

 Aは「赤(Bの帽子と同じ色)」と答える←正解
 Bは「青(Aの帽子と違う色)」と答える←不正解

 こうして、「2人のうち少なくとも1人」は確実に自分の帽子の色を当てることができるわけです。

<正解>

 1人は相手の帽子の色と「同じ色」を宣言する。
 もう1人は相手の帽子と「違う色」を宣言する。

 ということで、AIの回答は正解でした。

この問題からの「学び」は?

 この「50%の帽子」の問題は、戦略思考・情報活用・ロジック設計において重要な洞察を与えてくれます。

 以下に主なポイントを整理します。

①「不完全な情報」で成果を出す戦略の設計
 この問題では、お互いに「相手の帽子の色」という限られた情報しか得られない状況にあります。しかしそれでも、「事前の取り決め(戦略)」によって、100%成功する方法を作り出せます。
 ここから、情報が欠けている中でも「役割分担」や「方針の非対称性」を設ければ目標を達成できることが学べます。

②“確率”よりも“論理”で勝つ方法
 2人ともランダムに答えると、当たる確率は50%×2=25%もしくはそれ以下。しかしこの戦略では、論理で100%成功に持ち込めます
 ここから、直感的に「確率の勝負」と思ってしまいがちな状況でも、ルール設計の工夫で確実性を作り出せることが学べます。

③「非対称戦略」の威力
 この戦略では、Aは見た色とを言い、Bは見た色をそのまま言う、という非対称なルールを採用します。この工夫によって、2人の答えが必ず“どちらか当たる”形になります。
 ここから、チーム設計や意思決定において、「あえて違う行動ルールを設ける」ことが戦略的に有利になる場合があると学べます。

④事前合意の力
 帽子をかぶせられる前は、2人とも未来の状況がわからない。それでも事前にルールを決めることで、あらゆる未来に対応できる戦略が可能になります。
 ここから、複雑で先が見えない問題ほど、事前準備の質が結果を左右すると学べます。

⑤他者の視点を“判断材料”に使う
 自分では自分の帽子の色が見えない。でも相手から見える情報を元に判断すれば、解答を導けました。
 ここから、自分の判断が困難なときは、「相手が見ているもの」や「相手の行動」をヒントにすることで答えに近づけると学べます。

 このように、「情報が制限された状況でも、論理と設計で必ず成果を出す戦略は存在する」という学びを、楽しみながら得られる問題でした。

※本記事の問題は書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から抜粋しています。同書ではこういった「考える力が高まる問題」を67問紹介しています。