デンマークにはかつて、アンデルセン童話『マッチ売りの少女』に描かれたような貧しい時代があったことをご存知だろうか?
街頭の片隅で売れ残りのマッチを擦り、凍えそうな体を温めようとして亡くなっていく少女の物語は、19世紀半ばのデンマークにあった現実を象徴的に描いている。飢えと寒さの中で亡くなっていく人々が、当時はたくさんいたのだ。
時は下り、21世紀の今日。GDPこそアメリカやほかのヨーロッパ国には及ばないが、デンマークの民主主義は高く評価され、各種の「幸福度調査」では世界一にも輝いている。
貧しかった北欧の小国、デンマークはいかにして「世界一幸福な国」となったのか?
デンマーク大使館の広報官、イェンス・イェンセンさんの働き方を通してその謎に迫った。
公務員なのに副業もOK
これがデンマークのスタンダード
――まずは、このイェンス・イェンセンさんというお名前、日本人にはとても不思議な感じがしますね。
デンマークでは「ハンス・ハンセン」「ヘンス・ヘンセン」「トマス・トマセン」などのように同じ音が重なる名前は多いんです。僕のファーストネームであるイェンセンは、少し前まで、デンマークでは一番多い名前でした。
ちなみに、デンマーク語の「セン」は英語で言う「son(息子)」と同じ意味です。
――大使館にお勤めということは、公務員でいらっしゃる?
そうですね。ただし、僕は外交官ではありません。現地採用職員なので。公務員と言えば公務員だけど、ま、ふつうの会社員的な?
ここに勤務する以前は、日本で建築事務所やブランディングの会社に勤めたり、料理研究家としてデンマーク料理を教室で教えたり、ということもしていました。大使館に勤め始めたのは4、5年前、「商務部に空きが出たのでどうか」と知り合いに紹介されたのがきっかけです。最初のうちは商務官として日本に進出したいデンマーク企業のサポートなどをしていましたが、2年くらい前に今の広報官にシフトしました。
それと、これもちょっと日本では珍しいかもしれないのですが、去年くらいからフルタイムでは働きたくないなと思い始めまして、自分から提案して月曜日から木曜日までの週4日勤務にしてもらいました。だから、今は毎週末、ロングウィークエンドという感じです。