デンマークというと、多くの日本人は「幸福大国」というイメージを持つかもしれない。しかし、本当にデンマーク人は幸せなのだろうか? デンマークに留学中の大本綾さんが、現地で彼らの生活や習慣、価値観についてインタビュー。すると、日本とは大きく異なる幸せの感じ方や、成功に対する考え方が見えてきた。デンマークでの気づきや学びをリアルタイムで書き記す「留学ルポ」連載、第2回。

幸福大国は本当?

 世界一幸福の国として知られるデンマーク。充実した社会福祉制度のおかげで誰もが幸せに暮らしている姿は、日本のメディアで見覚えのある光景です。しかし、本当にみんな幸せなのでしょうか?

 その秘密を探ろうと、あるときデンマーク人の友人に話しかけました。「デンマークは世界一幸福の国で有名だけど……」と言うと、「デンマーク人は世界一幸せではないと思う。野心的でないから、失望することもないだけだよ。満足しているという言葉の方が合うかもしれない」と彼は言いました。

 デンマークに実際に暮らしてみて彼の言葉に納得するところもあり、一方で幸福大国への期待が外れた気分です。そもそもデンマーク人にとっての幸せとは何でしょうか。何かを達成して初めて得られるものでしょうか。それとも身近にあって、気づくものでしょうか。

 英レスター大学の調査、米国の調査期間ワールド・バリューズの幸福度ランキングでは、デンマークはトップです。(日本はそれぞれ90位と43位)。25%の高い消費税を払っていても、個人が負担する量がフェアであること、必要なときに必要なものを手に入れることができる、というのが主な理由で80%以上のデンマーク人は満足していると言われています。

 高負担の代わりに医療費は無料、小学校から大学まで無料で教育を受けることができます。さらに、失業保険も4年間、現役時代の90%が保証されます。留学生の私でさえ、学生ビザを取得したら医療費は無料です。

 その上、デンマーク第二の都市オーフスは、長寿者が元気と活力のある生活を送っている社会「ブルーゾーン」の研究で知られる、アメリカのダン・ベッドナー氏の調査で、地球上でもっとも幸せな4都市の内の1つとして紹介されています(他3都市は、シンガポール、メキシコのモンテレイ、アメリカのカリフォルニア州にあるサンルイスオビスポ)。

 人口約31万人のオーフスにはアーティストや学生が多く住み、異なる宗教観を持つ人々が共存しています。住民たちの間で収入の差がそれほど大きくはないので、コミュニティーに属している感覚や皆平等であることが感じられるようです。また海にも近く、自然に触れる機会が多いところも特徴的です。