80代の女性になったような感覚を味わうには、2人の助けが必要だった。筆者は、高齢者の生活向上について研究する米マサチューセッツ工科大学(MIT)の「エイジラボ」で、年齢の変化を疑似体験できるスーツを着用した。研究者2人に装着を手伝ってもらい、まず約7キロの重りの付いたベストを着て、体にストラップを巻いた。次に、加齢に伴う筋肉量の減少を再現するため、足首と手首にも重りを追加した。そして青いジャンプスーツを重りの上から着た。足を1本ずつ持ち上げてスーツに通すのを助けてもらい、転ばずに済んだ。さらに、筆者の腰にはハーネスが、足首の後ろや手首など、体のさまざまな部分には伸縮性のあるコードが取り付けられた。コードがあることで上に手を伸ばす動きが制限され、歩幅も短くなり、背筋を伸ばして立つことはさらに難しくなった。首の回転を制限するパッド入りの固定具と、視界をゆがめるゴーグルも付けられた。足には、底部分にクッション材の入った「クロックス」ブランドのサンダルを履き、バランスを取るのが難しくなった。