中国AI攻勢の中心地、資金・人材・起業家精神で台頭杭州は中国のハイテク中心地として台頭してきた

【杭州(中国)】中国は世界をリードする人工知能(AI)技術の開発に向けて競争を繰り広げている。その道を切り開くのは杭州だ。

 20年以上前、馬雲(ジャック・マー)氏はここ杭州の小さな集合住宅から電子商取引大手アリババグループを立ち上げ、風光明媚(めいび)な都市だった故郷がハイテク中心地へと変貌を遂げるきっかけを作った。

 杭州は現在、中国の世界的なテクノロジー戦略の中心にあるAIのハブ(拠点)となっている。転機となったのは今年1月、地元企業のディープシーク(深度求索)が米国のプログラムに匹敵するAIモデルをはるかに低いコストで開発し、世界を驚かせたことだった。

「杭州中が熱狂した」と、同市の集合住宅でAIスタートアップを立ち上げている起業家のチャオ・ジー氏(41)は話した。

 ディープシークが名声をつかんだのは偶然ではなかった。中国東部浙江省の省都で約1300万人が暮らす豊かな都市である杭州は、数十年にわたり起業家精神を育んできた。政府の支援策、研究大学、アリババやオンラインゲーム運営の網易(ネットイース)といった大手テクノロジー企業、そして北京や上海と比較して安い生活費が、杭州をハイテク人材の一大拠点にしている。

 チャオ氏は2018年に北京から杭州に移住し、アリババのマーケティングディレクターを約3年間務めた。同氏はAI業界で成功を収めようとしているアリババ出身者の一人だ。

 ある金曜日、チャオ氏と従業員2人は、アリババの本社近くにある門で囲まれた住宅地の2階建て集合住宅でテーブルを囲んでいた。彼らは、ユーザーの声と容姿を複製できる、企業向けの動画・音声コンテンツ生成AIエージェントを開発している。チャオ氏は昨年、このスタートアップ「アルファフィン」を立ち上げた。