
中国の人工知能(AI)開発企業ディープシーク(深度求索)は1月、西側諸国よりずっと低いコストでフロンティアモデルを構築し、世界のAIコミュニティーに衝撃を与えた。そのディープシークは今では米国の制裁対象となっている中国企業に追い抜かれた。半導体輸出を制限する米政府の戦略が効果を発揮していないことが、痛々しいほど明らかになっている。
先週、Z.ai(旧Zhipu AI=智譜AI)はディープシークの13%の価格で本番レベルのオープンソースモデル「GLM-4.5」を公開した。同モデルは、コーディングや推論、ツール利用において、西側製の標準モデルと比べ同等か、それを上回る性能を持つ。Z.aiのモデルは、米エヌビディアが最近中国での販売の再承認を受けた同社製チップ「H20」8個のみで稼働する。ディープシークの半分ほどのハードウエアで、より高い性能を実現している。
画像処理半導体(GPU)輸出に関して米政府が科している最も厳しい制裁措置の対象となっているZ.aiは、それにもかかわらず、これを実現した。米商務省は1月、中国の軍事近代化を支援したとして、Z.aiの前身である智譜AIとその子会社を米国の「エンティティーリスト」に入れた(智譜は米政府によるこの決定の根拠となった事実について異議を唱えた)。それから約 6カ月後、Z.aiは、アリババやテンセント、中国政府系ファンドから 15 億ドル(約2200億円)の支援を受け、世界でも最も競争力のあるAIモデルの一つを発表した。Z.aiは2025年に、何百万回ものダウンロード数と何百万ドルもの売上高を見込んでいる。