中国の抗日映画、Z世代向けに進化Photo:CFOTO/gettyimages

【北京】日中戦争を描写する中国の文化作品は最近、若い世代を引きつけるため、従来の手法を進化させている。大作映画のサバイバルゲーム的なストーリー展開や、1話が数分間のショートドラマを通じて実現している。

 最も注目すべき最新例は、映画「731(Evil Unbound)」だ。細菌戦や人体実験で悪名高い旧日本軍の731部隊を題材にしたこの映画は、巨額の予算が投じられ、1931年の日本による中国侵攻(満州事変)の追悼日である9月18日に合わせて公開された。

 映画は、同部隊が拠点を置いていた中国東北部を舞台に、中国の旧世代の映画ファンにはおなじみの、日本人による残虐行為を描いたおぞましいシーンを取り上げた。その中には、病原菌を持つノミに強制的に感染させられて死んでいく人々や、屋外に裸の人々を放置して凍えさせ、凍傷を起こさせる実験のシーンがある。死んだ赤ん坊も多数登場する。

 しかし、この映画にはもっと多くの新たな要素も盛り込まれた。例えば、映画のクライマックスに向けて構築されている、サバイバルゲーム的な展開だ。中国人、韓国人、ソ連人の捕虜たちが命懸けの試練に直面しながら収容所から脱出を試みる内容で、ビデオゲームや韓国の人気ドラマ「イカゲーム」シリーズと通じるものがある。

 この映画はまた、日本文化をグロテスクに様式化して取り入れている。鮮やかな色の着物を着た花魁(おいらん)が人質たちを死に向かって歩かせていく様子や、着物姿の女の子たちが巨大な薬棚から薬品を集めるのを手伝うシュールなシーンなどだ。

 中国共産党は長年にわたり、その統治の正当性を高めるために、第2次世界大戦に関する書籍や映画、テレビシリーズを絶え間なく制作してきた。その多くは日本を無慈悲な悪役とするものだ。1945年の日本の降伏から80年が経過して戦争の記憶が薄れつつある中、中国政府は古いやり方をアップデートする方法を見いだした。