北極圏の軍事訓練、怖いのは「暖かい」季節9月中旬にスウェーデンのロンベン近郊で行われた訓練で、機関銃を発射する兵士たち

【ロンベン(スウェーデン)】北極圏に近いこの地で、夏の太陽で氷が溶けてから数週間がたち、今の気温は10度とさわやかだ。

 この時期は北極圏で戦争を戦うには最悪の時期だ。

 北極圏で恐れられているのは、しもやけや雪目などの危険がある、寒さの厳しい冬だ。しかしこの地域で活動する兵士によれば、それより厄介なのは暖かい季節だという。蚊などの虫が湿地に群がり、その湿地は一晩で水浸しになって部隊の移動が妨げられ、車両が飲み込まれる恐れがある。

 西側の戦争計画担当者はロシアとの間で衝突が起きた場合、欧州北極圏が紛争地帯になる可能性があるとみている。欧米の軍隊は北極の冬の気象条件で訓練するため兵士を派遣しているが、スウェーデン軍が他国の軍隊に伝えたいのは、この地域ではおそらく暖かい時期のほうが厳しいということだ。2021年以降、スウェーデン軍は北大西洋条約機構(NATO)加盟国を北極で一年を通して戦えるようにするため秋季戦争課程を開設している。

「もし戦争が起きれば一冬では終わらないことをわれわれは実感した」。スウェーデン軍曹長で亜北極戦争センター国際訓練部門の司令官を務めるフレドリク・フリンク氏はそう話した。同センターはスウェーデン北部で秋季戦争課程を実施している。「(通年で戦うには)全く異なる戦い方が必要だ。ジャングルで戦うようなものだ」

 フリンク氏が見せてくれた最近の動画には、スウェーデン軍の兵士がイナゴの大群のような蚊の集団に囲まれている様子が写っていた。動画の中で、同氏は全地形対応型6輪駆動車のボンネットの上をなでた手をカメラに向かって掲げた。こぶしは虫だらけだった。