森に囲まれたこの家には14平方メートルのテラスがある
東京から2時間のところにあるデービッド・セブニン氏の住宅――ミニマルな造りの小さなコンクリート構造物で、勾配のある屋根がふいてある――は空から見るとシンプルに見えるが、実はそうではない。
この平屋住宅があるのは山腹で、床に埋め込んだ室内の浴槽には天然の温泉水が供給されている。数年がかりの建築プロセスは複雑で、現場の下見は20回ほどに及び、3種類の設計案が検討された。完成したのは3月で、91平方メートルほどの家の建築にかかった費用は約59万ドル(約8900万円)だ。
51歳のセブニン氏はフランス領ポリネシアのタヒチで、フランス人の両親の下で生まれ育った。10代でフランス本土に移り、2012年に日本に移住。職業はソフトウエアエンジニアだ。新型コロナウイルスが大流行する直前、東京のマンションを売り、増える一方の絵画と写真のコレクションを飾る空間のある家を郊外に建てることにした。
最初に土地を探したのは、東京の南約65キロメートルに位置する三浦半島――風光明媚(めいび)でリゾート地のような雰囲気がある――だった。しかし価格が高かったため、さらに遠くを探すことになった。東京から南に約145キロの起伏の激しい伊豆半島は東京への通勤者を呼び込むには遠すぎる。人との距離を保てる場所で、土地の価格も安かった。








