子どもと両親写真はイメージです Photo:PIXTA

さまざまな理由で、よりよい生活を求めて中国を脱出する中国人が増えている。そうした人々を指す「潤」という流行語はすっかり定着した。中でも日本へやってくる人々は「潤日」(ルンリィー)と呼ばれる。押し寄せる“新移民”潤日は、日本にどんな影響を及ぼしているのか?『潤日~日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』の著者が、その最前線を紹介する。(中国・ASEAN専門ジャーナリスト 舛友雄大)

東京都文京区に中国人富裕層が集まっている

 昨今、国内環境の悪化を理由に中国を離れ、日本へ移住してくる「潤(ルン)」の人々が注目を集めている。こうした中国新移民は家族連れであるパターンが多く、「資産の保全」「言論の自由」以外にも、「良好な教育機会」を求めてやってくる傾向が強い。

 すでに都内のインターナショナルスクールには、教育熱心な中国人夫婦の子息が殺到しており、中学受験向けの進学塾でも中国人生徒の存在感が増しつつある。特に地理的に見ると、中国人家庭が東京都文京区へ集中して移り住む動きが鮮明になりつつある。

 なぜ文京区なのか。同区は学者や文化人が好んで住む地域で、都内でも教育および文化の中心地として知られている。歴史をひもとくと、江戸時代には広大な武家屋敷などが立ち並び、明治時代以降に、これらが教育施設として転用された経緯がある。同区は昭和22年に小石川区と本郷区が合併して誕生した。区名は、当時から多くの学校が存在し、「文教の府」というイメージにもぴったりだということで「文京区」に決まったとされる。

 中国人顧客向け不動産会社「フューチャーリーディング」で売買を担当する聞楷[シ豊](ぶんかいとう)営業一部長は、文京区が中国人に人気の理由について次のように語る。「やっぱり東京大学があるからです。また、文京区は治安が良いことで知られています。ランキングでも治安の良い区として1位に選ばれることが多いです。それに後楽園、つまり遊園地も近く、周辺の生活環境も充実しています」

 文京区にはJRの駅がなく、大型商業施設が少ないため刑法犯罪が少ないという特徴もある。この治安の良さも、教育環境を重視する中国人家庭にとって、大きな魅力となっているのだ。