最強のヒント:「進捗率」をチェックする
では、その「上振れ」「下振れ」を、私たちはどうやって判断すればよいのでしょうか。会社計画という「地図」を手に取った後、私たちがすべき具体的な行動と、その精度を高めるための視点を見ていきましょう。
会社計画の「上振れ」「下振れ」を判断する最もシンプルで強力なツールが、四半期ごとに発表される決算での「業績進捗率」です。
単純計算と比較する
例えば、第1四半期(1Q)が終わった時点で、通期利益計画に対して進捗率が25%(単純に1/4)を大幅に超えて30%や35%に達していれば、「計画を上回るペースだ(上振れ期待)」と判断できます。
季節性を考慮する
ただし、業界(例えば、年末商戦が重要な小売業や、下期に業績が偏るITの受託開発など)によっては、特定の四半期に業績が集中する「季節性」があります。
単純な25%比較ではなく、その企業の「過去の平均進捗率」と比較することが重要です。
企業の「計画のクセ」を見抜く
すべての企業が誠実かつ正確な計画を出すとは限りません。ここにも「学び」のポイントがあります。
楽観的な企業:常に強気な計画を出すものの、結局達成できずに下方修正が常態化している企業
過去数年分の「当初計画」と「最終的な実績(着地)」を比較すれば、その企業の傾向(クセ)が見えてきます。保守的な企業が「いつも通り」の計画を出してきたなら、それは「実質的な上振れ余地あり」と解釈できるのです。
「定数」が動く瞬間を意識する
PERを「定数」と捉えましたが、現実にはこの「定数(市場の期待値)」も変動します。業績が良くても株価が上がらない、あるいは下がるケースです。
市場全体のムード:金融引き締め(金利上昇)や景気後退懸念が強まると、市場全体でPER(期待値)が切り下がり、優良企業の株価も下落することがあります。
成長の鈍化:たとえ計画を上振れしても、その「成長率」が市場の期待(例えば「前年比+30%は当然」という期待)に届かなければ、「期待外れ」としてPERが下がり、株価が売られることもあります。
業績予測はあくまで投資の「核」です。その上で、進捗率や企業のクセ、そして市場のムード(定数の変動)も合わせて判断することで、より精度の高い投資判断が可能になっていくのです。
※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。











