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ドナルド・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は再び、崖っぷちから引き返してきた。しかし、世界の二つの超大国が、世界経済を不安定化させる恐れのあった貿易戦争を沈静化させる中でも、新たな現実が始まりつつある。それは、中国政府に経済構造改革を迫るという長年の目標を、米政府がついに諦めざるを得なくなるかもしれないというものだ。
米政府高官らは長年にわたり、そして歴代の米政権を通じて、中国を世界貿易システムに組み入れることが同国の政治体制の開放につながると期待していた。2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟してからの数十年間に、そうした政治的自由化への期待はほとんど打ち砕かれた。2012年終盤に権力を掌握した習氏が国内の政治体制や市民社会に対する統制をより広範に強化するにつれて、失望感は高まる一方だ。
それでもトランプ氏の上級顧問の多くは、中国の経済自由化への期待を抱き続けていた。ホワイトハウスの当局者らは、米国の経済力を利用して、自分たちが重商主義的通商政策と見なすものから中国を脱却させることについて語っていた。そうした通商政策は、輸出を優遇し、製造業に補助金を支給し、14億人の自国民の消費意欲をそいできた。
米国の戦略立案者たちは、関税が輸出を圧迫し、中国に国内で新たな成長の源泉を見つけるよう促すと想像していた。恐らく医療・社会福祉制度改革によって消費者が支出を増やし、貯蓄を減らせるようにすることで、中国がそれを見つけるだろうと考えていた。中国政府に消費の拡大を迫ることによって、中国が米国などの国・地域からより多くの商品を購入し始め、中国の貿易黒字が縮小し、米国の企業や農家は、比類ない潜在力を持つ消費市場を開拓できるというのが、戦略立案者らの狙いだった。
第1次トランプ政権の関税攻撃は、米国産品の輸入拡大という約束を中国から引き出せたが、より大きな構造的目標の達成には一切つながらなかった。バイデン政権は、中国により広範な経済開放を促すこうした目標の多くについて聞こえの良い約束をしたものの、取り組みの大半はテクノロジー分野での中国の野心を抑え込むことに重点が置かれた。







