「好き」と言われると、つい甘えてしまう――。そんな経験はないだろうか。相手の好意に安心しすぎると、気づかぬうちにその“好き”を利用してしまうことがある。日韓累計40万部を突破したベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の続編『人生は期待ゼロがうまくいく』の発売を記念した本記事では、ライターの有山千春氏に、「誠実な関係のつくり方についてご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

【すぐ逃げて】「あなたをコントロールしようとする人」の巧妙なやり口・ワースト1Photo: Adobe Stock

他人の「好意」を利用している

 20代の頃、友達がいつも彼氏との別れ際にトラブルに発展していた。一度なら「男運が悪かったね。あんなやつ、早く縁を切ろう」と言えていたが、二度、三度と続くと、どうも釈然としなくなってきた。

 もしかして、友達にも原因があるのでは、と。

 なかでもよくあったのが、別れ際に金銭問題が発生することだった。

「別れを切り出したのに彼氏がごねて、たくさんの着信が残る。会社にも押しかけてきそうで怖い」

 おびえきった友達は付きまとい被害者のようだったが、よくよく聞くと、

「別れる直前、バッグを買ってあげるというから買ってもらったのに、それを理由に『君のために買ったのに!』と迫ってくる」

 という。

 前回もそのパターンじゃなかったっけ……。

 別れる予定にもかかわらず、相手の好意を利用するかのように高価なプレゼントをもらう行為が理解できない筆者に、友達は正当性を主張する。

「買ってあげる、と言われたから買ってもらっただけ。言われなければ買ってもらわなかった」

「いや、このままだとしつこく迫られ続けるよ。せめて返そう」

「でも、返したところで彼が落ち着くかわからないし」

 と、こんな具合に、「でも」「だって」を繰り返す。

 バッグで繋ぎ止めようとする浅はかな彼氏も彼氏だが、友達も友達だ。

人からの「好き」に甘えない

 結局、彼女とはいつの間にか会わなくなってしまったけれど、『人生は「気分」が10割』を読み進めているときに、「あ、これ、友達のことだ」と彼女のことを思い出したのだ。

 同書は「最高の一日が一生続く106の習慣」が綴られたベストセラーで、筆者の目に止まったトピックが、

「人からの『好き』に甘えない」

 ここでは、冒頭から芯を食った一文が綴られている。

「好き」という言葉は、「好きにしていい」という言葉と同義語ではない。それでも、好きと言ってくれる相手をいい加減に扱う人たちも少なくない。
――『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』より

 友達の行動はまさに、彼氏の「好き」を「好きにしていい」に変換したゆえだ。そんなふうに不誠実に扱われたのだから、今までの彼氏もすんなりと別れてくれなかったのだろう。

 さらに同書によると、こうだ。

 愛情でも友情でも、好きの度合いが互いに同レベルなら問題ないけれど、たいていはどちらか一方が相手よりもっと「好き」なわけで。だからどうしても「好き」の度合いが弱いほうの人は、「好き」がより強いほうの人の愛情表現に慣れっこになる傾向にある。それが当たり前だと思うほど、相手のことを雑に扱い出す。そのうち、相手の「好き」という感情を利用するようにもなる。そんな無礼でゲスなことはない。
――『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』より

 ただし、彼女を見てわかるように、人を利用すると結果的にめんどうなトラブルに巻き込まれることもある。

「好き」のバランスが悪くなるのは仕方がない。が、そこに甘えないように誠実になろう――と、教訓をくれた友達に、感謝した。

(本稿は、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』の発売を記念したオリジナル記事です)

有山千春(ありやま・ちはる)
メーカー広報、出版社編集者を経て2012年よりフリーライターに。主に週刊誌やWEBメディアで取材記事やインタビュー記事を執筆。昨年より高田馬場の老舗バーにてお手伝い中。