彼らは決して完璧な食生活を送っているわけではありません。むしろ、不規則な働き方、外食・中食への依存、時間のなさ、ストレスの多さなど、食事が乱れやすい条件が揃っています。

SNSを通して見聞きする「栄養価値志向」が
忙しいZ世代にマッチ

　しかしその一方で、健康を完全に諦めているわけでもなく、「できる範囲で最も効率の良い選択肢」を賢く求めているのです。そこで登場するのが、「栄養バランスの自動化」という発想です。色々考えなくても栄養が整う食品は、忙しい彼らの生活にぴったり合致します。

　さらに、SNS文化がこの栄養価値志向を一段と押し上げています。健康情報の拡散速度はこれまでの時代とは比較にならず、同世代の成功体験やライフログから「栄養の整った食事を取ると明確にコンディションが良くなる」という生の声が大量に届きます。

　ベースフードやナッシュなどのブランドがSNS上で再評価され続けているのも自然な流れだと言えるでしょう。

　こうした価値観の変化が市場全体にどのようなインパクトを与え、企業はどのような方向性でアプローチすべきなのか、さらに若者の栄養意識が未来の食のあり方をどう変えていくのでしょうか。

　まず注目すべきは、Z世代の「栄養バランス志向」が、従来の健康食品カテゴリーとは異なる市場領域を形成しつつある点です。従来の健康食品市場は主に「課題解決型」でした。

　例えば、腸活向けのサプリメント、疲労回復を目的としたドリンク、生活習慣病予防を掲げた食品など、明確な悩みを抱える層がターゲットでした。

　しかしZ世代の場合、目的は「問題を解消する」よりも「問題を未然に防ぐ」「リスクを将来に持ち越さない」といった、未来志向のニーズにシフトしています。

　この背景には、前半でも触れた「資産形成と健康維持の同時進行」という若者の価値観があります。彼らにとって、健康は単なる体調管理ではなく、「将来の金融資産を守るための予防投資」という位置づけになりつつあります。