若者が注力する「資産形成」「健康維持」は
「将来に対する不安」が根底に

 この動きは単なるトレンドではなく、Z世代を中心とした、若者の価値観の変化を象徴しています。彼らにとって健康とは、「体調不良を防ぐためのもの」ではなく、「毎日のパフォーマンスやメンタルの安定を守るための基本インフラ」となりつつあります。

 集中力・肌状態・睡眠の質・気分の安定など、生活の質に直結する要素として健康が認識され、健康管理のハードルが下がる食品・サービスが積極的に選ばれるようになってきたのです。

 特に近年注目されるのは、若者が抱える「将来不安」と健康意識の高まりが強く結びついている点です。

 Z世代は、経済の先行きや社会制度の将来に対して、漠然とした不安を抱き、実際にNISAやiDeCo、貯蓄型の投資を早期から始める若者が急増しています。彼らは「早くから資産形成をしないと将来困るかもしれない」という強い危機感を持っています。

 彼らが将来に抱いているもう一つのリスクが、健康を損なえば、せっかく積み上げた資産が医療費として消えてしまうかもしれないという恐れです。病気や不調による支出は予測しにくく、しかも一度健康を崩すと回復まで時間と費用がかかることも、身近な情報やSNS経由で学んでいます。

 つまり、彼らの中では「資産形成=投資」「健康維持=投資」の二つが同列に扱われつつあり、どちらかを欠くと未来の安定が損なわれるという認識が広がっているのです。

 この価値観の変化の中で、年齢相応の若さを維持することが将来の健康リスクを下げるとする「スローエイジング(緩やかな老化予防)」という概念が若者の間でも意識され始めています。

 体のコンディションの乱れは、過度に進む細胞の老化がその根本原因であるという認識から、肌のトラブル、睡眠の質低下、疲労の蓄積といった日々の小さな体の変化を「老化のサイン」と捉える感度は、以前の若者世代より明らかに高まっています。

 この感度の高さが、老化を加速させる普段の乱れがちな食事を「帳尻合わせ」するために、栄養バランス食品を取り入れるという行動へとつながっています。