「もう少し待てば、いずれ株価は戻るはず」多くの個人投資家が、株価下落時にそう感じます。そして実は、この瞬間にこそ、儲かる個人投資家と、損してしまう個人投資家を分ける決定的な分岐点が潜んでいます。「株価チャートのクイズに答えるだけで株のセンスが身につく」――そんなユニークなスタイルで人気を集めているのが『株トレ──世界一楽しい「一問一答」株の教科書』です。著者は、2000億円超を運用した元ファンドマネジャー、楽天証券の窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から、本書のポイントを紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
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恐怖が強すぎる人ほど、含み損を膨らませる
窪田さんは『株トレ』の中で、損切りの重要性を繰り返し強調しています。
なぜなら、個人投資家にとって最大の障害の一つが、お金を失いたくないという「恐怖感」であり、これが強いと、「いずれ株価は戻るだろう」「損失を確定しなければ、資産は減っていない」と、自分に都合よく考え、損切りが遅れてしまうからです。
その結果、ずるずると下落トレンドが続く悪い銘柄を保有し続け、損失が大きくなるというのは、個人投資家によくある失敗パターンです。
「お客様の命より大事なお金を預かっている」とマジメに考えすぎるファンドマネジャーよりも、ゲーム感覚で売買しているファンドマネジャーの方がパフォーマンスが高いと、窪田さんは語っています。
これは、責任感が欠如しているという意味ではありません。むしろ、感情に振り回されず、チャートという客観的な事実に基づき、冷静に売買を判断することの重要性を物語っているのです。
では、感情を排して、客観的に売買判断を下すトレーニングをしてみましょう。『株トレ』に掲載されている次のチャートを見て、この状況であなたが取るべき行動を考えてみてください。
3ヵ月前に950円で買い、その後株価は890円まで下がってしまいました。買い増し、損切り、様子見、どのような判断をしますか?

ここでの判断の正解は…
ここでの判断は「売り」が正解です。13週、26週移動平均線ともに、ゆるやかな下降が継続しています。トレンドに逆らうべきではありません。
窪田さんはこう言います。
「移動平均線はゆるやかに動きます。13週移動平均線は約3ヵ月の、26週移動平均線は約6ヵ月の企業価値の変化を反映して動いています。株価ほど乱高下せず、企業価値の変化により近い動きと考えられます」(『株トレ』より)
つまり、移動平均線が下降しているということは、この銘柄の企業価値が悪化していることを示しているのです。となれば、損切りをして、株価上昇が期待できる他の銘柄に乗り換えることが、冷静な判断でしょう。
頭でわかっていても、簡単には行動できない
「頭ではわかっていても、実際のトレードになると損切りは難しい」と感じる人は多いでしょう。理解と行動には隔たりがあるのです。
そこで重要になるのが、トレード経験の反復です。『株トレ』がクイズ形式であるのも、まさにチャートを見て正しい判断を繰り返す「トレーニング」を目的としているからです。



