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「接待」はよくある仕事のひとつだ。ビジネスの相手のご機嫌を取って仕事につなげる――しかし、この接待文化が不正につながることもよくある。そもそも本当に接待は効果があるのだろうか。ドトール創業者の接待に対する考え方が痛烈で、多くのビジネスパーソンにとって耳が痛いものだろう。(イトモス研究所所長 小倉健一)
「ただのご機嫌取り」の接待が日本社会にはびこる
政府・与党が、企業の交際費を経費として扱いやすくするために、「1人あたり1回1万円」という今の上限額を引き上げる方向で検討しているという報道(産経新聞、11月14日)があった。
物価高に対応し、企業の税負担を軽くし、経済を元気にすることが目的だとされている。外食産業や経済界からは期待する声が出ているようだ。
しかし、そのすぐそばでは、まったく逆のような出来事が起きている。
フジテレビ系列の地方局が、なんと11億円もの所得隠しを国税局から指摘されたのだ。しかも、そのやり方はかなり悪質だった。
CM制作をしたように見せかけて、実際には存在しない経費を計上し、裏金をつくっていた。そして、その裏金は広告会社への「接待費」などに使われていたという。報道(読売新聞、6月3日)では、関係者の話として「広告会社がいないとスポンサーが集まらず、接待という形でつなぎとめようとしたのだろう」と説明されていた。
「接待」は、経済を活性化させるための手段として期待される一方で、巨額の不正の原因にもなり得る。私たちは、「接待」という行為そのものを、もう一度よく考える必要があるのではないか。
なぜ、裏金まで作って接待をしなければならないのか。
たとえば、最先端技術を売るIT企業が、取引先を高級寿司店に招いたとする。相手は喜ぶかもしれないが、その「美味しさ」と技術力には全く関係がない。招待された側には、「美味しいものが好きな1人の人」と、「自社の課題を解決したい代表者」という2つの立場がある。
これまでの接待は、前者の「個人の気分」を良くすることばかりに偏り、後者の「ビジネスの相手」として向き合う姿勢が弱かった。
本来、投資とは、相手の組織にとって役に立つ知識やヒントを提供するべきものである。個人の楽しみだけにお金を使うのは、単なる浪費にすぎない。
先の事件は、この「仕事と関係のない機嫌取り」が目的化してしまい、ついには不正にまで手を出す結果になったと言えるだろう。







