「遺族年金は誰でももらえる」は大間違い…子ども・保険料で決まる残酷な現実とは?
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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「遺族年金の罠」に注意! 身近な人が亡くなった時のルール
本日は「相続と遺族年金」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
遺族年金とは、一家の働き手の方や年金を受け取っている方が亡くなったときに残されたご家族に給付される年金のことです。
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」がありますが、亡くなった方や残された家族の家族構成や収入状況等に応じて支給の有無が決まります。
遺族基礎年金の受給要件は、意外と厳しい!
遺族基礎年金の受給要件は厳しいものになっています。具体的には、残されたご家族に高校生以下(18歳以下※)の子どもがいる場合に支給されるものとなっているため、後述する遺族厚生年金の受給要件と比較すると、あてはまるケースは少ないです。
※厳密には子どもが18歳になった年度末(3月31日)までが遺族基礎年金の支給対象となります。
「保険料をどれだけ納めたか」も重要!
原則として、国民年金の保険料を、3分の2以上納めていたことが要件になります。厳密には、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あることが必要です。例えば50歳で亡くなった方の場合は、20歳から50歳までの30年間の3分の2以上(つまり20年以上)保険料を支払っていれば原則要件を満たします。
なお、特例要件として、死亡日が令和18年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。先ほどの例でいえば、原則要件を満たさない場合でも49歳から50歳の直近1年間に保険料の未納がなければ特例要件を満たしていることになります。
遺族厚生年金はどうすればもらえる?
遺族厚生年金の受給要件は遺族基礎年金の受給要件と比較すると厳しいものではありません。具体的には「生計を維持※」されているご家族がいる場合に支給されるものとなっております。
※「生計を維持」とは死亡当時に故人と生計を同一にしていた方で、原則として年収850万円未満の方が該当します。
保険料はどれだけ納めればいい?
原則として、厚生年金の保険料を、3分の2以上納めていたことが要件になります。厳密には、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あることが必要です(遺族基礎年金と同様)。なお、死亡日が令和18年3月末日までの特例要件についても遺族基礎年金と同様です。
遺族厚生年金の特徴
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者であった期間中の死亡だけでなく、過去に被保険者であった人であっても、「被保険者であった期間中に初診を受け、5年以内の死亡」の場合であれば支払われます。つまり、病気でやむなく会社を退職した人の場合にも、遺族厚生年金が支給される可能性があるということです。
例えば、病院で癌と診断され、5年以内に癌で死亡した場合には、会社を退職していても遺族厚生年金が支給される可能性があります。
年金受給の停止手続
年金を受けている方が亡くなった場合は、年金事務所等に死亡した旨の届出書「受給権者死亡届(報告書)」の提出が必要です。なお、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、原則として「受給権者死亡届(報告書)」の提出を省略できます。
遺族基礎年金の額(令和7年度)
子どものいる配偶者が受け取るとき:年間83万1700円+(子の加算額)
※昭和31年4月1日以前生まれの方は、82万9300円+子の加算額
配偶者がおらず、子どもが受け取るとき(次の金額を子の数で割った額が、1人あたりの額):83万1700円+(2人目以降の子の加算額)
※1人目および2人目の子の加算額:各23万9300円。
3人目以降の子の加算額:各7万9800円
遺族厚生年金の額(令和7年度)
原則として、故人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額となります。また、65歳以上の方は、遺族厚生年金とご自身の老齢基礎年金、老齢厚生年金または障害基礎年金の一部または全部をあわ
せて受け取ることができます。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)








