【一発アウト】「戸籍の罠」に要注意! 身近な人が亡くなった時のルール
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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知らないと絶対損する「戸籍の罠」
2024年3月1日から、相続実務にとって非常にありがたい制度が始まりました。それが「戸籍の広域交付制度」です。これまで相続に必要な戸籍を集めるには、故人の本籍地ごとに役所へ請求しなければなりませんでした。郵送だと1週間~2週間以上かかり、手続の初期段階で大きな時間と労力を要していました。
しかしこの制度によって、全国の市区町村(取扱窓口)で、自分や直系の親族(親・祖父母・子・孫など)の戸籍謄本を請求できるようになりました。
例えば、故人が複数回転籍していて、本籍地が全国各地に分かれているようなケースでも、最寄りの役所で一括取得が可能になります。これにより、相続人が集める出生から死亡までの戸籍一式も、非常にスムーズに揃えられるようになったのです。
知らないと完全にアウト! 「戸籍の罠」に注意!
ただし、注意点もあります。広域交付で請求できるのは、「本人」「配偶者」「直系の親族」の戸籍に限られます。
相続人であっても、兄弟姉妹や叔父・叔母など“直系ではない親族”の戸籍は、この広域交付では請求できません。兄弟相続などで必要になる場合は、従来どおり本籍地への請求(郵送請求を含む)など、別の方法を検討することになります。
また、広域交付は郵送請求や委任状による代理人請求ができず、請求できる人(取得したい戸籍との関係が本人・配偶者・直系[親/祖父母/子/孫]に当たる人)が窓口で手続するのが原則です。
そして広域交付で取得できるのは「戸籍謄本等」に限られ、戸籍の附票などは従来どおり本籍地での請求となるなど、対象外の証明書もあります。ちなみに、戸籍の附票とは、本籍地の市区町村で戸籍の原本と一緒に保管している書類で、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)現在にいたるまで(またはその戸籍から除籍されるまで)の住所が記録されているものです。
窓口に持参するもの
・顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証など)
・請求書(広域交付用。自治体のホームページで事前取得も可能)
・故人の本籍地(番地まで)と筆頭者氏名
・必要に応じて、請求者と故人の直系関係を示す戸籍のコピーなど
これらを忘れると、その場で戸籍が交付されないこともあるので注意が必要です。また、戸籍がコンピュータ化されていない自治体も一部存在し、その分の戸籍は広域交付制度の対象外のようです。従来通り故人の本籍地への請求が必要となります。
手数料は?
なお、手数料は通常の戸籍と同様で、戸籍謄本は450円、除籍謄本および改製原戸籍はそれぞれ750円となっています。支払い方法は現金が基本ですが、自治体によってはQRコード決済やクレジットカード払いが可能な場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
故人の戸籍をまとめて請求できることで、収集期間を大幅に短縮できます。法定相続情報一覧図の取得もラクになり、相続登記や預金口座解約など、手続の初動が一気にスムーズになります。かつて「相続はまず戸籍集めでつまずく」と言われていましたが、この制度によってそのハードルは大きく下がりました。ただし制度を正しく理解しないと、「請求できない人の戸籍を求めて無駄足」となることもあるため、しっかりと要点を押さえておきましょう。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・編集を行ったものです)








