おすすめプロンプト③
「先見倍歴」

 3つめのおすすめプロンプトは、「先見倍歴」という技法です。

 これは、社会の今後の変化も考慮してアイデアや問題解決をするための使い方です。
 そのプロンプトが、こちら。

「先見倍歴」のプロンプト

「先見倍歴」という未来予測の方法を定義します。
①対象(「製品」または「事業」)を取り巻く現時点の「社会環境」と「技術要素」について列挙します。
②それら(「環境要素」と「技術要素」)の過去30年の変化を洗い出します。
③その変化分と同じだけ、現在の時点から発展させたら、それら(社会環境や技術要素)はどのぐらい変わるか、を推定します。
④過去30年の変化分は、未来の15年間の変化分に相当すると仮定します。未来(15年後)に対象を取り巻く「社会環境」や「技術環境」をもとに、未来の対象(「製品」または「事業」)の姿を構想します。
この「先見倍歴」を用いて〈アイデアを得たい対象を記入〉の15年後の姿を予測してください。

――『AIを使って考えるための全技術』(199ページ)より

 いきなり未来を考えるのではなく、過去数年分の変化を振り返り、それを踏まえて未来予想をする。それが、「先見倍歴」と呼ばれる発想法です。

 ネーミングは著者のオリジナルですが、「9ウインドウズ」という発想法がベースになっています。それをよりシンプルに実践できるよう改良したのが「先見倍歴」です。一度過去を振り返ることで、遠い未来予測の精度を高めます。

 なお、プロンプトでは「15年後」を予測する場合を想定していますが、年数は状況に応じて書き換えてください。ただし、実際に予測したい「数年先」の、「2倍分」の過去を振り返ることが重要です。
 なぜなら変化の速度は加速するからです。過去30年の間に起きたのと同じ変化が、これから15年の間に起きる。そう考えるくらいで、ちょうどいいのです。

 発想をジャンプさせて斬新な未来を想定するのが苦手、不慣れだという方におすすめです。そしてなにより、過去の変化に基づいて未来を推定するため、説得力のある回答になります。「なぜそのアイデアなのか?」などと問われても、その根拠をしっかり説明できるアイデアが生まれます。

おすすめプロンプト④
「6W3H」

 4つめのおすすめプロンプトは、「6W3H」という技法です。

 これは、思いつきレベルのアイデアの詳細を具体的に描くための使い方です。
 そのプロンプトが、こちら。

「6W3H」のプロンプト

〈アイデアを出したスレッドに続ける、もしくはアイデアを記入する〉
先にあげたアイデアを具体的なプランに発展させるために、6W3Hのすべての要素を具体的に述べてください。6W3Hの各要素は以下です。
What(何を):アイデアの内容や目的を明確にする。
Why(なぜ):アイデアの背景や理由、価値を明確にする。
Who(誰が):アイデアの対象者や関係者を明確にする。
Whom(誰と):アイデアの協力者やパートナーを明確にする。
Where(どこで):アイデアの場所や範囲を明確にする。
When(いつ):アイデアのタイミングや期間を明確にする。
How(どうやって):アイデアの方法や手段を明確にする。
How much(いくらで):アイデアのコストや収益を明確にする。
How many(どれだけ):アイデアの数量や規模を明確にする。

――『AIを使って考えるための全技術』(297ページ)より

 ミーティングの場にアイデアを出した途端、上司や他のチームメンバーが「なんだか、よくわからない……」的な反応になってしまって、場が静かになる……。新商品やサービス、新規事業プロジェクトあるある、です。

 そうなってしまうのは、そのアイデアには、まだ「抜け」や「漏れ」があるからです。評価をしようにも情報が足りないから、そもそも「わからない」となる。

「企画」に必要な代表的な要素は5W1Hです。「Who」「Why」「What」「Where」「When」、そして「How」。さらに、企業などの組織が企画を判断する際には、さらにプラスされているとベターな要素があります。「Whom(誰とやるか)」「How much(いくらかかるか)」「How many(どれくらいのスケールでやるか)」です。

 1行アイデアを、この「6W3H」が整理された状態に整えられると、内容の良し悪しは別として、大まかにGO/Not GOの評価ができるようになります。

 そんなときに使ってほしいのが、足りていない要素をAIの力を借りて肉付けする技法「6W3H」です。このプロンプトを使って投げたアイデアに対して、AIが「6W3H」で足りない要素を具体的に言語化してくれます。

 プレゼンテーションや会議提出の資料を作成する前にアイデアを「6W3H」で整理しておけば、あとはそれぞれの要素を深掘りして広げていくだけで済みます。また、場に出たアイデアがどれも抽象的で、「もうちょっと具体的かつ現実的にしてから検討したい」というときにもおすすめです。

おすすめプロンプト⑤
「ダメ出しの模擬」

 5つめのおすすめプロンプトは、「ダメ出しの模擬」という技法です。

 これは、考えたアイデアに対して「上司の視点」でダメ出しして、ブラッシュアップするための使い方です。
 そのプロンプトが、こちら。

「ダメ出しの模擬」のプロンプト

〈企画を記入〉
この企画に、上層部はどのように反応するか、指摘事項を教えてください。上層部が重視する評価軸は、一般的な大企業のものを援用してください。
――『AIを使って考えるための全技術』(362ページ)より

 アイデアを出し、企画に整え、実行へとつなげていく一連の工程の最後には、企画書にまとめて上層部にプレゼンしたり、稟議を回したりする段階が来ます。

 ですが上層部の求めるお作法やポイントなんて、現場からはわからないものです。上層部や幹部と現場とでは、見える景色が違いますからね。
 そうは言っても、忙しい上司や経営陣たちに、何度も「ご確認いただき、ダメ出ししてください」なんて頼めません。「思考停止している」と思われかねませんから。

 そこで、上司や経営者に代わってAIにダメ出しをしてもらう技法が「ダメ出しの模擬」です。企画に対する上層部からの指摘事項をAIに代打してもらいます。

「ダメ出しして」ではなく、「指摘事項」を聞いているのがポイント。肯定と批判、どちらも出せる余地があるように表現することで、AIに「強い否定」をされるのを防いでいます。

 AIからのダメ出しを受けて、企画をブラッシュアップしてから上司や経営者に提案する。そうすれば、上層部が「こんなレベルのことを言わなきゃいけないのか」と感じるような指摘は受けずに済みます。企画の本質を吟味してもらい、実施に向けて前進していけるでしょう。

 上司に指摘される前に自ら改善できる「ダメ出しの模擬」。アイデアのブラッシュアップにはもってこいの技法です。

AI「が」考えるのではなく、AI「で」考える

 AI時代の仕事においては、速さでも器用さでもなく、「考える力」がモノを言います

 その点、AIに雑な質問をし、出てきた回答を鵜呑みにすることは、もはや「思考の放棄」です。

 この記事で紹介したプロンプトをAIに投げると、「普通に聞く」のとはまったく異なる回答が得られます。

 その回答を見た人間側の脳が働いて、さらに新しくて面白いアイデアが生まれる。

 このように、AIを「考えるための道具」として使いこなせる人が、周りと差をつけていきます。

 ぜひ2026年は、この5つのプロンプトから始めて、AIを使いこなせる人を目指してみてください。

(本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。この5つ以外にも書籍では、AIを使って思考の質を高める56の方法を紹介しています)