美術館に行っても「きれい」「すごい」「ヤバい」という感想しか出てこない。でも、もっと美術を楽しめるようになりたい。そう思ったことはありませんか?
「こやぎ先生」としても活躍する、ご指名殺到の美術旅行添乗員・山上やすお氏の書籍『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』から「マジですごい」超絶美術をご案内します。

「アンリ・ルソーの絵は本当にすごいの?」詳しい人に聞いてみた。『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』より

ヘタクソにしか見えない絵のどこがすごい?

――…あれ、ここからは一般の方の作品が展示されているみたいですね。何か、市民コンクールでもあったんでしょうか?

え、どれですか? …あ、ああ、その作品はアンリ・ルソーという画家の作品ですよ。

――画家…の絵? え、これが? 画家ってなんだっけ…(汗)?

わかりやすいパニック(笑)。もっと混乱させると、彼はあのピカソにも影響を与えた巨匠なんですよ?

――え!! ピカソにも…! なるほど…これも上手な絵なんですねぇ…美術の世界は深いなぁ…(しみじみ)。

え、上手なんて言ってませんよ? 彼はヘタクソ界の巨匠、アンリ・ルソーなんです!

――えええ!! もうまったくわかりません! どういうことなんですか?(汗)。

はは、私も最初にルソーの作品を見た時には同じ感想でしたよ(笑)。ルソーは税関職員として働きながら休日に絵を描く日曜画家だったんです。正式に絵を習ったことはなかったようで、自分の感性の赴くままに描いていたそうですよ。

――は、はぁ…。そりゃあ結構なことで…。

そうして誰からの影響も受けずに自分の感性だけで絵を描き続けました。その結果、「美術の教育を受けた人には到達できない境地」にたどり着いた、という感じでしょうか。だって、ご覧ください。大きなルソー像に対して、足元の人物はまるで虫のようなサイズ感ですよね。

――ほんとだ!! こんなところに人がいた! なんだかヤバさが増しますね(汗)。あれ、そう言われれば後ろの船も随分と小さいぞ…。え、ルソーが大きいの?

はは(笑)。この作品はまるで風景画の中に肖像画を当てはめたようなので、当時の新聞記者から「『風景=肖像画』というものを発明した。彼は特許を取っておくべきだ(笑)」とか言われているんです。

――めっちゃディスられてる…(笑)。あ、笑っちゃ悪いか。さぞ傷ついたんでしょうね…。

と、思うでしょ? でもルソーは、「そうですとも! 私は『風景=肖像画』の発明者なのであります!」とか結構気に入っちゃってるんです(笑)。

――どひゃー! 天然(汗)。

ルソーはその性格も作品に負けないくらい面白いんですよ(笑)。まあ、実際彼の生前は、ピカソのような一部の前衛的な人にしか評価されていませんでした。でも、やっぱり何にも影響を受けていない彗星のようなインパクトを持つ作品は、結果たくさんの芸術家に影響を与えたんですよ。

(本記事は『死ぬまでに観に行きたい世界の超絶美術を1冊でめぐる旅』の一部を抜粋・編集し作成しました)