『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、高校生のお子さんを持つ親御さんに知っていただきたい大学選びで後悔しない人のたった一つの考えかたについて解説します。

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経済学部や法学部だけじゃない

「子どもには、やはり経済学部や法学部など、いわゆる“王道”の学部に進んでほしい」

こうした親御さんの思いはとても自然です。就職や将来の安定を考えたとき、伝統ある学部には確かに強さがあります。しかし最近は、ユニークで専門性の高い学部が大きな注目と人気を集めているという現実もあります。

先日発表された大学入試の志願状況を見ると、まさにその潮流がはっきりと表れていました。たとえば、2026年度から佐賀大学が設置した「コスメティックサイエンス学環」は、化粧品産業に特化した専門教育を行う学部ですが、前期で5.4倍、後期にいたっては17倍という高倍率になっています。九州以外の出身者が4割を占め、全国から幅広く志願者が集まっていると報じられています。

また私立大学でも、首都圏や関西圏の有名大学が続々と新しい学部を設けています。立教大学の環境学部が共通テスト利用で18.1倍、立命館大学のデザイン・アート学部が43倍、近畿大学の新設看護学部にいたっては69.3倍という高倍率になっているとのことです。

これらは決して「一過性の流行」ではなく、大学自身が時代のニーズを読み、学生がそれに応えている結果です。そして、この現象こそ、私たち親が進路を考えるうえで見逃してはいけない視点だと思います。

「学ぶ内容」と「大学名」を分けて考える

従来、「早慶の経済学部」「MARCHの法学部」など、大学名と学部名を組み合わせた“ブランド軸”で進路を考える傾向が強かったのは事実です。もちろん、それも一つの有効な選択肢です。

ただ、今回のような新設学部人気を見ると、学びの内容そのものに価値を置く学生が増えていることがうかがえます。コスメティックサイエンス学環は化粧品産業という非常に具体的なフィールドを掲げていますし、環境学部やデザイン・アート学部は、それ自体が高度な専門性と創造性を求められる学びです。

このような学部は、在学中に深い専門知識と実践的なスキルを身につけられる可能性があり、将来のキャリアの幅も大きく広がることが期待されています。

親が最初にやるべきこと

こうした流れを受けて、親御さんが最初にやるべきことは、「進路選択の軸を、大学名から学びの内容へとシフトすること」です。

よくある進路の問いは、「どの大学に行きたい?」「偏差値はどれくらい?」と大学名・偏差値軸で終わってしまいがちです。でも実際には、「どんなことを学びたい?」「どんな仕事をしたい?」「そのためには、どんな学問が役に立つ?」という問いを親がしっかり投げかけることこそが、子ども自身の考えを深めるポイントです。

たとえば、環境問題に関心がある、ものづくりやデザインが好き、医療・看護の現場で役立つ力を身につけたい、化粧品や美容・健康産業に興味がある。こうした具体的な動機があるなら、伝統的な学部名称や大学ブランドだけを最初に見るのではなく、学びの中身を軸に進路を考えることが、子どもにとって幸せなキャリア形成につながります。

学ぶ「意味」を一緒に言語化する

新設学部やユニークな専門学部は、これまでの王道ルートでは拾えなかった個性や適性をキャッチします。環境学・デザイン・コスメティックサイエンスといった専攻は、言葉で聞くと斬新でも、実際には時代・社会・産業の変化を敏感に捉えた学問です。

親としてできることは、そのユニークさそのものを否定せず、まず理解すること。そして、そこに子ども自身が持っている関心や価値観がどうつながるかを、丁寧に聞き出すことです。

大学名や偏差値は、入試時点での評価に過ぎません。しかし、「自分が本当に学びたいこと」は、その後の人生の仕事や関係性に深く影響します

進路は「時代の変化」を読むことでもある

今回の志願状況が示しているのは、「大学名」「ブランド」だけでなく、学生自身が学びの内容を重視する時代になっているということです。

親としては、どうしても「安心できる王道ルート」を勧めたくなります。でも、子どもはその先の社会で「何をしたいのか」「どんな価値を生みたいのか」を問われます。

そのとき、「早慶の経済学部を出ています」だけで立ち行く時代は、確実に過ぎつつあります。これからは、「私はこういうテーマを学んだ」という軸が、そのままキャリアの軸になる時代です。

そのために、親として今できることは、子どもの関心を丁寧に聞くこと、学びの意味を一緒に言語化すること、偏差値だけでなく学問そのものの価値を伝えることです。

そして何より、「新しい学部が人気だから」ではなく、「学びたいことがあるなら、向き合ってあげる」という姿勢を持つことが、子どもの未来を拓く一歩になります。

(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)