『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「偏差値や受験難易度だけで語られがちだった子育てに新しい視点を取り入れてほしい」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回の記事では、小学生の子育てにおすすめの意外な場所について、孫氏と『5科目50年分10000問を分析した東大生の テストテクニック大全』著者の西岡壱誠氏の特別対談をお送りします。
Photo: Adobe Stock
団地とインターナショナルスクール
西岡壱誠氏(以下、西岡氏) 孫さんのご両親は華僑で、30年前に日本に来られた苦学生だったと聞きました。
孫辰洋(以下、孫氏) はい。父親が起業して成功するまでは、団地で暮らしていました。その後、北京のインターナショナルスクールに通うことになったんですけど。
西岡氏 団地とインターナショナルスクール……真逆の環境ですよね。
孫氏 そうなんです。でも今振り返ると、この両方を経験できたことが本当に良かったと思っています。特に団地での経験は、自分の原点になっています。
団地には「いろんな人」がいた
西岡氏 団地での暮らしって、具体的にどんな感じだったんですか?
孫氏 とにかく多様だったんです。年齢も、職業も、国籍も、価値観も違う人たちが同じ空間に住んでいる。子どもの頃は何も考えていなかったですけど、今思うと、あれがすごく大事な経験でした。
西岡氏 「多様性」って言葉で片付けられがちですけど、実際に暮らすとどう違うんですか?
孫氏 頭で理解するのと、体で知るのは全然違いますよね。団地では「普通」が存在しないんです。みんな違うのが当たり前。働いていない人も、なんかそこらへん半裸で歩いている人もいて、本当に多様。でも別に、みんな普通に幸せそう。そういうところで暮らしていたから、「こうあるべき」とか「これが正解」っていう感覚が、最初から薄かったんだと思います。
西岡氏 それが、推薦入試の塾を創業する際に「なんで大人が決めたルールで順位をつけられるの?」って疑問を持つことにもつながった?
孫氏 そうかもしれないですね。「一つの基準で人を測る」ことに違和感を持てたのは、団地で色々な生き方を見ていたからだと思います。
「友達全員と仲良くなるまで帰ってくるな」
孫氏 あと、よく覚えているのは引っ越し先で「友達全員と仲良くなるまで帰ってくるな」って親に言われたことですね。
西岡氏 きつそうですよね。(笑)
孫氏 はい、大変でした(笑)。でも、自分と違う人、違う環境に飛び込んで、関係を作る力を鍛えられる経験だったなと思っています。自分は推薦入試で成功する人に共通する10のマインドの1つが「越境マインド」というものがあると思っていて、多様な人と話して相手の価値観をしっかり理解しようとすることができる能力だと定義しているんですが、それがその経験で培われたなと。
西岡氏 確かに、団地って自然と色んな人と関わらざるを得ないですもんね。
孫氏 そうなんです。エレベーターで会う人、公園にいる人、全部が学びでした。「巻き込む力」や「信頼を作る力」も、あの環境で自然と身についていったんだと思います。
インターナショナルスクールとのコントラスト
西岡氏 その後、北京のインターナショナルスクールに通われたんですよね。
孫氏 はい。父の仕事の関係で。いわゆる質の高いと言われる教育を受けられる環境でした。
西岡氏 団地とインターナショナルスクール、両方を経験したことで何が変わりましたか?
孫氏 インターナショナルスクールでは「世界標準」を学べました。でも、団地で学んだ「地に足のついた多様性」がなかったら、ただの頭でっかちになっていたと思います。
西岡氏 なるほど。インターナショナルスクールはインターナショナルスクールで多様な感じしますけどね。
孫氏 それはそうなんですが、インターナショナルスクールの多様性って、ある意味「エリートの多様性」なんですよ。団地で見た多様性は、もっとリアルで、もっと生々しい。その両方を知っていることが、今の自分を作っていると思います。
中高では学力が芳しくなく、2浪という厳しい状況の中で、自分自身の学びを徹底的に見直し、独自の勉強法を確立。これにより偏差値35から偏差値70まで成績を伸ばし、東京大学に合格を果たす。この経験をもとに、学びに悩む学生たちに希望を届ける活動を展開中。『東大読書』(2018年、東洋経済新報社)など、勉強法や思考法の研究と実践に基づいた著書はベストセラーとなり、多くの受験生や教育者から支持を集めている。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』に関連する対談記事です)




