「うちの子、語彙が少ないのでは?」「自分の意見をちゃんと言えない」‥‥‥。スマホやSNSの普及により、子どもの「言葉にする力」の衰えを危惧する声が増えています。そんな中、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)等のべストセラーで知られる文章の専門家・山口拓朗氏が、待望のこども版『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社)を上梓しました。同書は、マンガと「言葉を使ったゲーム」を通じて、子ども(小学校低学年~高学年)が楽しく言語化能力を身につけられる画期的な一冊です。本連載では、本書をベースに親御さん向けの記事として抜粋・編集した記事や、著者による書き下ろし記事で、「子どもの言語化力」を高める秘密を紐解いていきます。

「悪口ばかり言う子になるのはなぜ?」→専門家の答えに納得しかなかったPhoto: Adobe Stock

言葉は攻撃のための道具なのか?

 愚痴、悪口、否定、不満、ののしり。
 こうした言葉が日常的に飛び交う家庭で育った子どもの言語化力は、どうなるのでしょうか。

 結論から言えば、しなやかで豊かな言語化力は育ちにくく、自分や他者を傷つける言葉に偏りやすくなります。

 子どもは、言葉を「意味」だけで覚えているわけではありません。言葉に伴う感情や使われ方、さらには親の表情や声の強さ、その場の空気まで含めて吸収しています。
「この言葉は、どんな気持ちのときに使われるのか」。そうした文脈を含めて、言葉を学んでいるのです。

 そのため、親の愚痴や不満、悪口が多い環境では、子どもは次第に、言葉を「怒りや不満をぶつけるためのもの」「感情をただ吐き出すためのもの」と認識するようになります。その結果、「言葉は攻撃の道具」「強い言葉を使ったほうが勝つ」という学習が進んでいきます。

言葉の背後にある世界観まで子どもは引き継ぐ

 さらに厄介なのは、言葉の背後にある世界観まで引き継いでしまうことです。

 世界は、不満や不安、敵意に満ちている。そんな見え方が、無意識の前提となる。すると、子ども自身も、友だちをののしったり、きつい言い方で相手を制したり、少し嫌なことがあるだけで暴言を吐いたりしやすくなるのです。

 本来、言語化力には、怒りや悔しさだけでなく、優しさ、励まし、希望、感謝といった言葉も含まれています。

 同じ出来事でも、「攻撃された。絶対に許せない」と捉えることもできれば、「この経験のおかげで大事なことに気づけた」と意味づけし直すこともできます。

 子どもは、その両者を振り子のように行き来しながら、健全な言語化力を育んでいくのです。

 もちろん、ネガティブな感情や言葉は、人間にとって必要なものです。しかし、それしか使えなくなると、言葉や感情のバランスが崩れてしまいます。否定やののしりが多い環境で育った子どもは、ネガティブ感情が生まれた瞬間に、〈自分を傷つける言葉を吐く〉か、〈言葉で他者を傷つける〉かという短絡的な二択に陥りやすく、「考えて言葉を選ぶプロセス」が育ちません。
 家庭で飛び交う言葉は、良くも悪くも、子どもの未来の土台になっていくのです。

 拙著『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』には、親子や子ども同士でできるゲームを通じて、「考えて言葉を選ぶプロセス」が育つ遊びをいくつか紹介しています。ぜひ気軽にやってみてください。

 *本記事は、『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社刊)の著者山口拓朗氏による書き下ろしです。