◆「儲からない」からこそ最強? 50%暴落しても“リスクプレミアム”を信じ続ける納得の理由
ゴールドマン・サックスに入社し、マネージング・ディレクターに就任、アジアのトレーディングチームを率いた。その後、200兆円超の運用残高を誇る世界有数の機関投資家・ゆうちょ銀行で投資戦略を牽引。そんなマーケットの最前線を知り尽くしたトレーダーが、個人投資家が一生使える「オルカン」「S&P500」の“次の投資術”を徹底指南した初の著書『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)。投資初心者でも実践できるよう、徹底的にわかりやすく投資手法を体系化。ゴールドマン・サックス仕込みの「投資思考」や「オルカン+4資産均等型」といった実践的なポートフォリオ(資産配分)の構築方法、有望な個別株の見つけ方まで、「オルカン」「S&P500」の“次に知るべき”ノウハウが満載!
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一見完璧に見える「理論派」の投資戦略
投資に有効であると思われる信念(スタイル)を結集した「リスクプレミアム戦略」という投資手法があります。このように書くと、ぜひともやってみたいと思う人がいるでしょう。
しかし、このリスクプレミアム戦略を採用するファンドのパフォーマンスは、あまり安定していません。
王道とされる「4つの勝ちパターン」
例えば、アカデミアでの実証研究も多く、投資において株価や企業の質などを評価する代表的な4つのファクター(バリュー・モメンタム・低ボラティリティ・クオリティ)を取り入れているファンドがあります。
●モメンタム(勢い) 上昇トレンドにある銘柄を選ぶ投資戦略
●低ボラティリティ(変動) 相対的に株価変動性が低いと考えられる株式
●クオリティ(質) 将来にわたって優良企業であり続けるための企業の質
これら4つのファクターは多くの投資家が採用しているものですから、これらを組み合わせた総合スコアに基づく投資戦略をとれば、大きなリターンを期待できると思われるかもしれません。
「黄金の5年間」の後に訪れた悪夢
ところが、この戦略を採用して実際に運用されているファンドのパフォーマンスを見ると、2012年から2017年の5年間の成績は素晴らしいものの、2017年から2020年までのリターンは50%ほど急激に下落しています。
「常勝不敗」のルールは存在しない
このように、しばらく有効であったファクターが、その後しばらくは有効でないということがしばしばあるのです。この結果だけを見て長期投資にリスクプレミアム戦略が有効かどうかを結論づけるのは早いのですが、「儲け続けられるファクターは存在しない」と私は考えています。
【解説】「不調」こそがリターンの源泉である
「儲け続けられるファクターは存在しない」。この結論を聞いて、投資への希望を失いかけた方もいるかもしれません。しかし、逆説的ですが、この「うまくいかない時期(冬の時代)」があるからこそ、長期的にはリターン(プレミアム)が得られるのだと理解することが大切です。
もし、ある投資手法が「いつでも・確実に・誰でも」儲かるものだとしたらどうなるでしょうか? 世界中の資金がそこに殺到し、株価は適正価格を超えて高騰し、あっという間に「儲からない投資」になってしまいます。
「リスクプレミアム」とは、文字通り「リスク(不確実性や価格変動)」を引き受けたことに対する「プレミアム(対価)」です。50%の下落という恐怖に耐え、市場から逃げ出さなかった人だけが、その後の回復局面で果実を手にすることができるのです。
「バックミラー」を見て運転しない
多くの個人投資家が陥りやすい罠は、直近の成績(過去)を見て投資先を決めてしまうことです。2012年から2017年の「黄金の5年間」だけを見て投資を始めた人は、その後の下落で大きな痛手を受けました。
車の運転でバックミラーばかり見ていたら事故を起こすように、投資でも「過去の好成績」は「未来の約束」ではありません。むしろ、特定のファクターが好調すぎる時は「そろそろ反動が来るかもしれない」と警戒するくらいの冷静さが求められます。
個人投資家の最強の武器は「時間と分散」
プロでも、どのファクターがいつ来るかを完璧に予測することは不可能です。だからこそ、個人投資家が取るべき戦略はシンプルです。
一つは、特定のファクターや銘柄に全財産を賭けず、複数の要素に分散すること。これにより、どれかが不調でも致命傷を避けられます。そしてもう一つは、一時的な下落に動揺して売却せず、長く市場に居続けることです。
「常勝不敗」のルールはありませんが、「一貫性」を持って長く続けた投資家が報われやすい、という事実は歴史が証明しています。
※本稿は『最後に勝つ投資術【実践バイブル】 ゴールドマン・サックスの元トップトレーダーが明かす「株式投資のサバイバル戦略』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。











