◆なぜ「良い決算」で暴落するのか? 投資を“人間理解のゲーム”に変える方法
「人生詰んだ」と絶望する40歳、小遣い月1万5000円のしがないサラリーマン。重いローンと教育費、冷え切った家庭に居場所を失った彼が拾ったのは、89歳の現役トレーダー・シゲルさんの古びた手帳だった。投資歴70年“投資の神様”から授かる、お金と人生を劇的に変える究極の授業。“小説形式”でスラスラ読めてドンドンわかる話題の書『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』から、どん底からの逆転劇のノウハウを凝縮して解説する。

【投資歴70年 資産25億円】決算書は年に4回だけ…残りの360日に株で儲ける人が見ている「数字より大事なもの」写真:川瀬典子

株価が動く真の理由

株式投資の世界に足を踏み入れると、多くの人が「業績が良い株を買い、悪い株を売る」という数式の解き方のようなルールに縛られがちです。しかし、実際のマーケットはもっと泥臭く、人間味にあふれた場所です。

今回は、ベテラン投資家の視点から語られた「株価が動く真の理由」について、本質的な学びを紐解いていきましょう。

決算発表は「年に4回」しかないという事実

投資の勉強を始めると、まず「決算書を読もう」と教わります。もちろんそれは正解ですが、ベテラン投資家シゲルさんは、こんな問いを投げかけます。

「もちろん、決算が悪ければ売られるよ。でもな、決算なんて年に4回しかない。もし決算だけでしか株価が動かへんとしたら、チャンスなんて限られてしまうやろ?」

この言葉にはハッとさせられます。1年は365日ありますが、公式な通信簿である決算発表はそのうちのわずか4日。もし「業績の数字」だけが株価を決める唯一の要因だとしたら、残りの360日あまり、株価が上下する理由がなくなってしまいます。

「業績が悪いから下がる」の落とし穴

私たちはつい、「業績の悪化」と「株価の下落」を直結させて考えがちです。しかし、シゲルさんはその因果関係を鋭く訂正します。

「投資家として、君はどんなときに株を売りたくなる?」という問いに対し、「今後下がると思うとき」「業績が悪いとき」と答える若手投資家。それに対し、シゲルさんはこう説きました。

「ほら、またそれや。さっき言ったやろ。『業績が悪いから株価が下がる』んとちゃう。業績が悪くなって、投資家が『もうこの株はいらん』と思うから下がるんや

株価を決めるのは誰?

ここが非常に重要なポイントです。株価を決めるのは計算機ではなく、「人間(投資家)」の意思なのです。

●物理的な現象:業績が悪い(数字の悪化)
●心理的な現象:「もう持っていたくない」「損をしたくない」(不安)
●市場の結果:売り注文が増え、株価が下がる

つまり、株価が下落するのは「数字が悪いから」という客観的事実の結果ではなく、その数字を見て「人が不安になり、手放す」という主導的なアクションの結果なのです。

個人投資家が持つべき「心の視点」

この考え方を理解すると、個人投資家としての戦略がガラリと変わります。

「期待」と「不安」のサイクルを読む株価は、人々の「もっと上がるだろう」という期待や、「もうダメだ」という不安によって、適正価格を超えて大きく振れます。この「心理の揺らぎ」こそが、投資家にとっての利益の源泉(チャンス)になります。

数字の裏にある「群衆心理」を想像する:株価チャートや決算資料の向こう側には、自分と同じように悩み、焦り、喜ぶ人間がいます。「みんなが今、不安で投げ売りしたくなっているのではないか?」と一歩引いて考える力が、冷静な判断を支えます。

投資は「人間理解」のゲーム

「ああ……人が不安になったときに、株を手放すってことですね」

若手投資家がたどり着いたこの気づきこそ、相場の真理です。株価は実体のない数字の羅列ではなく、数千万人の投資家の「欲望」と「恐怖」の合算値です。

業績という「客観的な物差し」を持ちつつも、それを見た人間がどう動くかという「主観的なドラマ」を読み解く。そんな人間心理への洞察こそが、荒波の相場で生き残るための最強の武器になるはずです。

※本稿は、『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。