『虎に翼』を思い出した…“行けなかった思い出”ほど忘れられない理由〈風、薫る第58回〉『風、薫る』第58回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第58回(2026年6月17日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

バーンズ先生の夢

 りん(見上愛)たちの卒業が近づいていた。

「OBSERVE(観察)」からはじまった彼女たちの学習は「DREAM」――夢に行き着く。

 ある日、バーンズ(エマ・ハワード)はスコットランドに帰ると言う。

 急展開。

「人生も病もいつも予期せぬものです。私の夢はあなた方に託します」

 ここで出てきたワードが「ドリーム」――夢。

 夢には見るものとは違う意味がある。将来やりたいことやなりたい状態といったことである。令和のいまでは当たり前のふたつの意味だが、明治時代はまだそれもおぼつかなかったようだ。言葉の歴史は興味深い。

「雲をつかむようなもので構いません」とバーンズは、自身の子どものときの夢はアップルパイをおなかいっぱい食べることだったと言う。

 スコットランドの裕福な家庭に生まれたバーンズは、病院で働くようになり、そんなある日、日本という東洋の島国には看護婦がいなくて困っていると聞き、単身、日本にやって来た。

 そのとき、バーンズの夢が生まれた。日本のどんな病院にも当たり前にいるようになること。

「6つの種を撒くことができました。それが60人、600人、6000人に増えたとき、私の夢はかないます。みなさんよろしくお願いします」

 劇伴は「庭の千草」。

 静かに頭を下げるバーンズに、6人は感無量。ひとりだけ大泣きしているのは、松井(玄理)だ。

 彼女の大泣きで6人がもし涙しようと思っても引っ込んだに違いない。松井の出番もあまりなかった。彼女もまた、もったいない脇役のひとりであろう。

『風、薫る』におけるもったいない脇役たちといったら、小林隆、つぶやきシロー、大島美幸、ザ・たっち、丸山礼などがいる。