ものづくりの新潮流として、日本でもすっかり定着した感のある「メイカームーブメント」。その中心にあるMaker Faire(以下、メイカーフェア)は、7年前に米国で、ものづくりをする人々が集まって、自身の作ったものを展示すると共に、参加者同士での交流を行なう場として始まったものだ。

日本では最初Make:Tokyo Meeting(MTM)としてスタートし、昨年はMaker Faire Tokyo 2012として開催された。また東京以外でも、Make:Ogaki Meeting(MOM)は岐阜県大垣市で2010年と2012年に開催され、こちらも大成功を収めた。今年は西日本で初めて、Yamaguchi Mini Maker Faireが8月に開催されるほか、11月にはMaker Faire Tokyo 2013も開催予定である。

こうしたメイカーフェアの核となっている米Make誌の編集長を務めるマーク・フラウエンフェルダー氏が、6月に開催されたMaker Conference Tokyo 2013の基調講演のために来日されたので話を聞いた。ちなみにインタビューには、Make誌の日本版を出版し、またアジアにおけるメイカーフェアの展開を進められているオライリー・ジャパン代表取締役社長のジョン・ムーア氏も同席された。(聞き手/フリーライター 大原雄介)

アフリカでもメイカーフェアを開催
世界に広がるDIYの潮流

Mark Frauenfelder
メイカームーブメントを主導する米Make誌(Maker Media発行、日本語版はオライリー・ジャパン発行)の編集長として、新しいDIYの潮流を牽引する。
1988年、自費出版の雑誌(zine)として「bOING bOING」を創刊、93年から98年までWired誌の編集に携わった経験を持つ。「bOING bOING」は、ブログメディア「boingboing.net」へと移行し、世界で最も人気のあるブログメディアのひとつとなった。著書に、自らのDIY体験記を綴った『Made by Hand ―ポンコDIYで自分を取り戻す』(オライリー・ジャパン)、『ザ・コンピュータ』(トランスワールドジャパン)などがある。
Photo by Yusuke Ohara

――今年、ベイエリアで開催されたメイカーフェアは大成功で、出展者・観客ともに大幅に増えたと聞いていますが、これについてどう考えていますか?

フラウエンフェルダー(以下、MF) 2006年にメイカーフェアを初めて開催したときには、2万人が訪れました。2013年の今年は?というと、12万人です。実のところ、訪れてくれる人は右肩上がりに増えている状況です。私自身は、これはメイカーというムーブメントとメイカーのコミュニティが歓迎され、受け入れられているということだと考えています。

 実際メイカーたちはとても親しみやすいし、メイカーフェア自体がもともと若者から老人まで、保守派から革新派まで、どんな人でも受け入れるという土壌があります。政治信条も問題としておらず、興味がある人なら誰でも受け入れます。物を作ることに情熱を持つ人なら、誰でもここに参加できるという環境があるので、例えば会場ではヒッピーと軍人が話しこむといった光景が見られたりします。

――一般的にどんなものであっても、最初は急激に参加者が増えますが、ある程度に達すると伸びがフラットになってゆきます。このあたり、メイカームーブメントについてはいかがでしょう?

MF 伸びが緩やかになるまでにはまだ大分かかると思います。今のところ、伸びが鈍化する傾向は全くありません。というのは、母体となるMake誌が、やはりどんどん部数を伸ばしているからです。アメリカでは昔からお馴染みのPopular Mechanics誌やPopular Science誌の発行部数は120万~140万部もあります。ですので、Make誌も頭打ちになるまでにはまだまだ部数を伸ばせる余地があると思っていますし、いつぐらいに頭打ちになるかは想像も出来ません。ただ、頭打ちになってもその時の部数は、現在よりずっと高いだろうと思いますね。