現在、米国を中心に「ものづくり」のブームが起こっている。その発信源となっているのが、電子工学系DIY工作専門誌Makeと、同誌主催のDIYの祭典「メイカー・フェア(Maker Faire)」だ。大量消費社会のなかで人間が失っていた、「モノを自分の手で作る」という本能的欲求を呼び覚ました、とも評されるMakerムーブメントについて、その提唱者であるデール・ダハティ氏に、このブームの背景や意味、次世代の社会への期待について聞いた。(聞き手/科学技術ジャーナリスト 山田久美、ダイヤモンド・オンライン IT&ビジネス)
オープンソースの考え方が
ハードウェアにも波及
――さっそくですが、「Makerムーブメント」と呼ばれる現象を生んだ、メイカー・フェアについて、こうしたことをやろうと思った経緯について教えて下さい。
2005年にMakeを創刊し、日々取材をする中で、大変多くの面白い作品を作るMaker(創り手)たちに出会いました。そこで、そういったMakerたちが一堂に会し、自分とは異なる分野のMaker同士の出会い、交流を深める場を作りたいと考え、「メイカー・フェア」という展示イベントを始めました。すると、回を追うごとに出展するMaker数、来場者数共にグングン伸び続け、気付いたら一大ムーブメントになっていました。回を重ねることでますます、特定の分野にとらわれることなく、自由で豊かな感性や才能を育成できる場になってきたと自負しています。
――Makerムーブメントをかたちづくる重要なキーワードに「オープンソース・ハードウェア」というものがありますね。
Makerムーブメントが従来のDIYと違うのは、Makerは自分のガレージや地下室にこもって孤独に黙々と作品づくりを行うのではなく、自分が作ったものに対して、他人が新たな機能を付け足すなど、色々な人が必要に応じて改善しながら、いくつもの作品を作り上げていく「オープンソース・ハードウェア」の考え方が生まれてきたことにあるのではないかと思っています。
リナックスOSに代表されるオープンソース・ソフトウェアは、最初はライセンス契約の新しい提案にすぎなかったものですが、「誰でも自由に使えて、自分のニーズに応じて改変できる」という考え方が広がるにつれて、やがて従来のビジネス社会にはなかった新しいコラボレーションの形態を定着させました。そういったオープンソース・ソフトウェアのムーブメントが、今まさにハードウェアの世界で起こっています。