ロシア政府の激推し「スーパーアプリ」、市民監視強めるPhoto:Anadolu/gettyimages

 ロシア政府は何年もの間、ロシア国内で巨大なユーザー基盤を築いた欧米テック企業のプラットフォームの勢いを抑え込み、インターネットの自由を制限するのに苦慮してきた。だがここにきてロシアの新たな国産スーパーアプリがその目標を可能にしつつある。

 ロシアの大手テック企業VKが運営するメッセージング・電子商取引プラットフォーム「MAX(マックス)」は、中国の 微信(ウィーチャット) をモデルに、配車サービスや電子パスポート認証などあらゆる機能を提供するアプリに発展している。

 政府が全面支援するMAXは、大統領府に近い著名人らによって、「テレグラム」や「ワッツアップ」に代わる安全を高めたメッセージングアプリとして利用が推奨されている。人気だった2つのメッセージングプラットフォームは現在、ロシアの検閲当局に制限されつつある。

 同アプリは、全ての西側製アプリを類似の国産アプリに置き換えることを目指すデジタル輸入代替計画のモデルケースとされ、ロシアで相次ぐ模倣品開発の流れをくむものだ。その中には、ユーチューブに似た動画共有プラットフォームや、 アップル やアンドロイドのアプリストアをまねたロシア版のようなものもある。

 だがデータプライバシーの活動家によると、この暗号化されていない新アプリは、拡大し続ける検閲体制の布石にすぎない。ロシア政府はこれを通じて、市民のネット上の行動を全て見聞きし、非公開のメッセージを読み、個人データを吸い上げ、どのユーザーが仮想プライベートネットワーク(VPN)を使って政府のアクセス制限を回避しているかを特定できるようになるという。

 活動家はMAXがさらに、インターネットの世界的な分裂を加速させ、ネット空間を権威主義国家が管理する異質な領域へと押しやっていると警告する。

「こうした利便性の高いスーパーアプリは、利便性の裏に監視を潜ませた『トロイの木馬』でもある」と、フューチャー・トゥデイ・インスティテュートを率いる未来学者のエイミー・ウェブ氏は指摘する。同氏によると、MAXやウィーチャットのようなプラットフォームは、市民が自らポケットに入れて持ち運ぶ「政府直結の監視ツール」として機能する。「なぜ自発的にそれを使うのか理解に苦しむ」と同氏は言う。