朝ドラは「女性の自己実現ドラマ」? →長年視聴して気づいた“本当に描かれているテーマ”〈風、薫る第29回〉『風、薫る』第29回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて12年目の著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第29回(2026年5月7日放送)の「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

シマケンが何者か判明

 冒頭からびっくりした。

 夏。かげろうがゆらゆら。りん(見上愛)が川のたもとの店で瓶を見ている。赤い布のうえに恭しく乗せられた瓶が光を浴びてキラキラ。輸入物のラムネは1本8銭で手がでない。

『明治大正昭和値段史年表』(朝日新聞社)にもラムネは明治20年、8銭とある。

 ほかに飲み物の値段を見てみると、サイダー(明治25年):14銭、コーヒー(明治19年):3銭、『ばけばけ』でおなじみ牛乳(明治20年):3銭、『マッサン』でおなじみウイスキー(明治20年):28銭(1級ウイスキー1本)など。サイダーやラムネなどの炭酸系は高価だ。

 高価なラムネにひかれながらも、りんはそれをまさかなものに重ねて笑ってしまう。

 横型だからそういう連想をしてしまうのと、それだけりんが看護の仕事に熱心に取り組んでいる証しであろうか。

 そこでまた偶然出くわすシマケン(佐野晶哉)。ぶつかるという出会いがあまりにもあざとい。この場合、あざといを誰に向かって言ったらいいか、シマケンか、制作スタッフか。

 今日も髪をかきむしって金田一耕助ふうのシマケン。彼が探偵さんではないこと、彼の正体がこの日、ついに明かされた。

 団子屋でりんとお茶しながら明かされた彼の正体は、新聞の「活字拾い」(活字工)であった。

 この仕事、『銀河鉄道の夜』のジョバンニがやっていたことを思い出す視聴者もいるかもしれない(ドラマの時代ではまだこの作品は描かれていない)。令和のいまでは稀少になっている活版印刷では活字という字型が使用される。印刷する原稿に沿って、膨大な活字のなかから文字を拾い上げていく仕事は言葉に詳しいシマケンにぴったりとりんは感心する。

 活字工という仕事を設定したのは興味深い。編集者でも記者でも作家でもなく、裏方。

『らんまん』(23年度前期)では印刷工場が出てきたが、今回は印刷工自体ではなく、活字拾い。

「活字工」――大切な仕事だなと傍から見て思うが、シマケン自身はこの仕事がやりたいわけではない。