危険を知らせる
キャデラックならではのアイデア
ドライブして印象的なのは静粛性だ。BEVは静粛性が美点だが、リリックはライバル以上に静かさにこだわっている。合わせガラスを採用したり、ドア開口部を3重シールで仕上げるなど、徹底して消音対策しているのだ。それだけではない。フロントサスペンションのストラットタワー上部には、足回りの作動音を検知し、それを打ち消す周波数をスピーカーから出す、新世代のノイズキャンセルシステムを採用。驚くほど静かな車内空間を実現した。
オーディオも素晴らしい。静かな空間を活かし豊かな音場を楽しめるようにと、19ものスピーカーを持つ名門AKG(オーストリア)との共同開発によるフルサラウンドサウンドシステムを導入した。AKGは、プロフェッショナルオーディオ機器のブランドとして有名である。
パフォーマンスは俊敏で力強い。最高出力522ps(384kW)、最大トルク610Nmを発生し、0→100km/h加速を5.5秒でクリアするというだけのことはある。バッテリーは95.7kWの容量、一充電で510kmの走行を可能としている。
ハンドリングもハイレベル。気持ちよく曲がれるコーナリング性能が光る。先進装備も意欲的だ。パドルを引くとブレーキを踏まなくても完全停止できる先進機能が与えられている。実際に使うと、足を踏み換えてペダルを踏むよりずっとラク。車速に合わせて適宜減速し穏やかに止まる。とても重宝する。
先進運転支援装備も充実。シート座面を振動させて危険の迫る方向をドライバーに知らせる機能を採用している。キャデラックならではのこのアイデアは実用的だ。
ちょっぴり残念なのは、印象的なフロントやリアクオーターの光の演出が、日本では未装備な点。日本の車両規制に抵触するらしい。いずれ何らかの形で光るようにしてほしいものだ。
リリックは、キャデラックらしいエレガンスさと未来を先取りしたBEVである。車両価格は1100万円。絶対的には高価だが、内容を知るとリーズナブルに思えてくる。魅力的な1台である。
(CAR and DRIVER編集部 報告/岡本幸一郎 写真/原田 淳)








