スタートアップのバイブルとして名高い『起業のファイナンス』シリーズの最新刊として、『起業のコーポレート業務』が発売されました。オフィスの探し方や社会保険への加入、PR、反社対応、M&A・IPO準備など、総務・経理・労務・法務とEXITに関する全てをカバーする「スタートアップの実務大全」とも言える1冊で、スタートアップ以外の企業のコーポレート部門の人にも大いに役立つ内容となっています。
この連載では、主に同書の「コラム」を公開していきます。第15回は「健康経営」についてです。

健康経営Photo: Adobe Stock

スタートアップでも対応可能な「健康経営」

 以前は、従業員の健康管理は自己責任であり、企業がコストをかけて取り組むものではないと考える経営者は少なくありませんでした。しかし近年、従業員の健康増進は、労働意欲の向上や優秀な人材の定着を促し、企業の業績や価値向上に結びつくと考えられるようになりつつあります。

 健康経営の概念は、米国のロバート・H・ローゼン博士がその著書『ヘルシー・カンパニー』(ロバート・H・ローゼン著、宗像恒次他訳、産業能率大学出版部刊、1994年)の中で提唱したものです。日本では、2006年に発足したNPO法人 健康経営研究会の活動を通じて知られるようになり、2013年に閣議決定した「日本再興戦略」をきっかけに推進する動きが本格化しました。これを受けて設置された次世代ヘルスケア産業協議会が「アクションプラン2015」を取りまとめ、具体策として「企業による健康経営の取り組み推進」が明記されました。

 現在、経済産業省では「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」を健康経営と定義し、優れた企業を「健康経営銘柄」として東京証券取引所と共同で認定しています。

 また、2016年度には、大企業などを対象とする「大規模法人部門」と、中小企業などを対象とする「中小規模法人部門」に分類の上、健康経営優良法人認定制度もスタートしています。

 スタートアップが含まれる中小規模法人部門でも申請数は毎年増加しており、2023年度では(下記図表には含んでおりませんが)16,733法人が認定されています。

 中小規模法人の場合、大規模法人と比較すると認定要件はそこまで多くありませんし、申請した場合の認定率も90%を大きく超えています。

 組織の規模が50人を超えて衛生管理者・産業医を配置したら、健康経営優良法人認定を目標として設定して、毎月実施する衛生委員会において進捗を確認しつつ、労務担当者の個人目標に紐づけるという設計にしてみてはどうでしょう。

 健康経営優良法人認定を取得・維持することで相応に、従業員の健康への投資が行われている状況が担保できますし、対外的なアピールにもなり採用にもプラスに働くでしょう。