通帳を見て絶望する女性写真はイメージです Photo:PIXTA

大手企業勤めの夫は、月収63万円、貯金4800万円――。一見すると金銭的に不自由しなさそうな専業主婦が、なぜ絶望の淵に追い詰められたのか? その原因は、夫が妻に課した「月25万円ルール」にありました。誰にも相談できなかった妻が夫に内緒で取った「ある行動」とは? 老後資金の数字に執着するあまり夫が見落としていた、あまりにも大きすぎる代償に迫ります。(家計再生コンサルタント 横山光昭)

預金通帳の数字より
大切なモノ

 2026年、「物価高」や「インフレ」という言葉に一喜一憂するフェーズは過ぎました。いまや「高いのが当たり前」という前提で、誰もが静かに、そして懸命に生活を守っています。

 将来への備えが大切だということも再認識されています。しかし、その一方で真面目に将来を考えすぎるあまり、今の暮らしの「手触り」や「家族との温度感」をどこかへ置き去りにしてしまう人が増えていると感じます。

 今回ご相談に来られた中島英樹さん(仮名・53歳)も、そんなお一人でした。英樹さんは大手メーカーで働くベテラン管理職。専業主婦の妻・恵美さん(仮名・51歳)、私立中学に通う長男(中3)、中学受験を検討している長女(小5)の4人で、都心から1時間ほどの賃貸マンションに暮らしています。

 英樹さんが私の元を訪れた目的は、純粋な現状の確認でした。「役職定年を前に、今の預貯金で老後は足りるのか。新NISAなども検討すべきかジャッジしてほしい」というものでした。

 英樹さんの手取り月収は約63万円。30年近いキャリアの中で、派手な贅沢をせずコツコツと給料やボーナスを積み上げてきた預貯金は4800万円にのぼります。その数字の重みは、英樹さんが家族のために実直に働いてきた時間の積み重ねそのものでした。

 ですが、この立派な数字とは裏腹に、英樹さんの表情はどこか暗く、凝り固まっているように見えました。詳しくお話を伺っていくと、この4800万円という通帳が、いま中島家の空気を重く沈ませていたことがわかってきたのです。