「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

二流は「知らない言葉」に出会ったとき、わかったフリをする。じゃあ、一流は?

「知らない言葉」に出会ったとき

 会議中、誰かが知らない言葉を使った。
 SNSで見慣れない流行語を見かけた。
 若手社員が使う言葉の意味がわからない。

 そんなとき、多くの人は「なんとなく意味はわかった」と思い込んでしまいます。

 しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』によれば、その瞬間こそが成長の分かれ道です。

 二流はわかったフリをする。
 一流は、その言葉が実際に使われている場面を観察するのです。

言葉は「コレ」を指しながら覚える

 本書では、まずこんな場面が紹介されています。

犬の散歩をしていると、保育園の園児たちとすれちがうことがあります。
すると、保育士さんたちが、
「ワンワンだよ~」
と言って子どもたちに声をかける。一部の園児がそれに応えて、
「ワンワン……」とつぶやく。
「コレ」と指でさせるものは、こうやって言葉を覚えていくと考えるのが自然です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 子どもは辞書を読んで言葉を覚えるわけではありません。

 まず先に犬がいる。
 その犬を指さしながら「ワンワン」と聞く。

 つまり、言葉より先に「現実」があるのです
 だから本当に理解できる。

わからない言葉ほど、「使われ方」を見る

 本書では続いて、こんな指摘がなされています。

では、パッとイメージできない言葉は、どうやって覚えていくのでしょうか。
「若者言葉」や「流行語」を考えてみましょう。
流行語は使い方も辞書に載っていませんし、そもそも決まっていないことがあります。
そういう言葉はどのようにして覚えられていくか。
それはまず、「周りの人がその言葉を使っている場面を見て」です。
言葉は最初に「その言葉が使われている瞬間」に出会うところからはじまります。
パッとイメージできない言葉を指さしするのは「言葉が使われたその瞬間」です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 仕事でも同じです。

「レバレッジ」「アジェンダ」「エンゲージメント」「カルチャー」…

 それらの意味を調べることはできます。
 しかし、その言葉が実際にどんな場面で使われるのかを見なければ、本当には理解できません

一流は「定義」より「具体例」を集める

 本書では、こんな興味深いエピソードも紹介されています。

たとえば「シャバい」という言葉があります。
お笑いコンビのニューヨークの2人が、この言葉を解説している動画があります。
面白いのは、2人がその言葉の意味や定義を言わなかったことです。
代わりに、どんなときに「シャバい」を使うか、使わないか、具体例をいくつも説明していました。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここがポイントです。
 本当に言葉を理解している人ほど、定義ではなく具体例で説明します。

 なぜなら、その言葉の中身を知っているからです
 逆に、わかったフリをしている人ほど、辞書のような説明しかできません。

 言葉のラベルは知っている。
 でも中身は知らない
 だから現実で使えないのです。

一流は「使われる場面」を覚える

 本書では最後にこう語られています。

新しい言葉はこうやって、「これがそれだ」と信じている人によって使われます。
「これはシャバい」「これはシャバくはない」「いや、シャバい」など、さまざまな人が言い合いながら、使い方が固まったり、変化したりします。
もし多くの人がそれで使い方を理解し、使っていけば流行語は定着します。
でも使い方がわからず、使う場所もなかったら、忘れ去られていきます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 つまり、新しい言葉を覚えるとは、「定義を暗記すること」ではありません。
 その言葉が生きている現場を見ることです

 どんな人が使うのか。
 どんな状況で使うのか。
 何に対して使うのか。

 そこまで観察して初めて、その言葉は自分のものになるのです。

「わかったフリ」が成長を止める

言語化だけじゃ伝わんない』は、学び方そのものを見直させてくれる本です。

 二流は、知らない言葉に出会うと「なんとなくそんな感じね」と理解した気になる。
 だから成長が止まる。

 一流は違います。

「その言葉、どういう場面で使うんですか?」
「具体例を教えてください」
「それって、こういうケースでも使いますか?」

 と、使われ方を観察する。つまり、一流は言葉ではなく現実を見ているのです

 だからこそ、新しい概念も、本質的な知識も、自分の血肉として吸収できるのでしょう。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない –––– 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。