「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「わかりました!」と即答する人が無能である理由・ワースト1

「わかりました!」と即答する人

「なるほど、わかりました!」
「レバレッジが大事なんですね!」

 仕事では、こういう「理解の早い人」が優秀に見えることがあります。

 ですが、『言語化だけじゃ伝わんない』では、むしろ「言葉だけで即理解した気になること」が危険だと語られています。

 なぜなら、人は「言葉を理解した瞬間、本当はわかっていないことに気づけなくなる」からです。

「仕事ができる人になりたい」と思っていた

 本書では、まずこんな話が出てきます。

「仕事のできる人になるには、どうしたらいいんだろう?」
20代後半の頃の私は、仕事のできる人に憧れていました。
制作会社を1年足らずで辞め、契約社員として働きながら転職先を探していたとき。
「うまく転職するには仕事ができる人にならないとダメだ」と考えていたのです。
――『言語化だけじゃと伝わんない』より

 これは、多くの人が通る道です。

 仕事ができる人になりたい。成長したい。評価されたい。
 だから、人は「仕事術」の言葉を集めはじめる。

 ですが、その段階で、すでに落とし穴があるのです。

「カッコいい言葉」に納得してしまう

 本書では、さらにこう続きます。

「仕事ができる人」とはどういう人のことか。
答えを探すために、人に聞いたりビジネス書を読んだりしていました。
そこで出会った言葉のひとつに、てこの原理を意味する「レバレッジ」があります。
てこを使えば小さな努力でも大きな成果を上げられる。
「なるほど、たしかにそうだ。レバレッジが大事だ!」と、妙に納得していました。
でも、結局のところ私は、仕事のできる人にはなれず、転職もできませんでした。
――『言語化だけじゃと伝わんない』より

 人は、「レバレッジ」「戦略」「生産性」「本質」みたいな言葉を聞くと、理解した気になります。
 ですが、本当に危険なのはここです。

「わかった!」と思った瞬間、人は考えるのを止めてしまう
 つまり、言葉に酔っているだけになるのです。

本当に無能なのは、「わかった気になる人」

 本書では、最後にこう語られています。

「どうしたら仕事ができる人になれるか?」
「レバレッジが大事だ」
こんなふうに考えていたら、おそらく永久に仕事ができるようにはならないでしょう。
それは、「仕事」や「レバレッジ」という言葉の理解がふわっとしているからです。
ふわっと言葉だけで理解していると、現実に活かすことができません。
なぜこんなことが起きるのか。
言葉が人を「わかった気持ち」にさせたまま放置するからです
「レバレッジが大事」と思った私も「わかった」と思い込んでいただけでした。
言葉だけでわかった気になって、本当はわかっていないことに気づけないのです。
――『言語化だけじゃと伝わんない』より

 本当に危険なのは、「理解が遅い人」ではありません。
 わかった気になって止まる人です

 たとえば、「顧客視点が大事」「本質を考えろ」「レバレッジを効かせろ」。
 こういう言葉を聞いて、「なるほど!」で終わる。

 ですが、本当に仕事ができる人は、そのあと考え続けています。

「具体的にどういうこと?」
「自分の仕事だと何?」
「どの場面で使う?」
「逆に失敗するケースは?」

 つまり、言葉を現実へ変換しているのです

「即答する人」ほど、危ない

言語化だけじゃ伝わんない』は、「理解」の怖さを教えてくれる本です。

 人は、言葉を知ると、すぐに「理解した」と思ってしまう。
 ですが、本当の理解は、そこから始まる。
 だから、仕事ができる人ほど、「わかりました!」と即答しません

 むしろ、「具体的には?」「たとえば?」「実際どう動く?」と考え込む。
 つまり、「わからない部分」を探し始めるのです

 一方、無能な人ほど、「わかった感」に酔いやすい。
 そして、そのまま現実で何も変わらない。
 だから本当に怖いのは、「わからないこと」ではありません。
「わかったつもりになること」なのです

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。