投資で成功するには、難しい知識や大金が必要だと思っていないだろうか。だが世界一の投資家ウォーレン・バフェットが20歳で実践したのは、誰にでもマネできるシンプルな行動だった。その原点は『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』に記されている。本連載では、本書の内容から、ウォーレン・バフェットの投資術をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

米国株のチャートのイメージPhoto: Adobe Stock

専門家は本当に正しいのか

 多くの個人投資家は、株を選ぶとき「プロが勧める銘柄なら安心だ」と考えてしまう。専門家が割高だと言えば手を出さず、評判が悪ければ避けるのが普通だろう。

 だが本書に登場する20歳のころのバフェットは、その常識をくつがえした。

 彼が師と仰いだベンジャミン・グレアム(バリュー投資の生みの親と呼ばれる伝説の投資家)から学んだのは、事実だけを見て判断せよという姿勢だった。

 本書には、専門家がそろって「割高だ」と判断した会社に、バフェットがあえて全財産の大半を投じた話が出てくる。

 その会社こそ、現在も米国で大きなシェアを持つ自動車保険会社ガイコ(GEICO)である。

自分の足で確かめる

 20歳のバフェットは、ガイコについて調べるため、ある行動に出た。土曜日に列車に乗り、その会社の本社まで直接たずねて行ったのだ。

 休日にもかかわらず、たまたま出社していた財務担当の幹部が応対してくれた。事前に調べた知識をぶつけ、鋭い質問を重ねた結果、なんと4時間も話し込むことになった。

 この訪問で彼は、ガイコが持つ二つの強みを見抜いた。仲介業者を使わず通信販売で売る低コストな仕組みと、事故を起こしにくい優良な顧客を抱えていることだ。机の上のデータだけでは分からない事実が、そこにはあったのだ。

数字と評判の両輪

 では、私たち個人投資家はここから何を学べるだろうか。

 本書は、企業分析のコツとして次のように述べている。

企業分析をする際には、財務状況などの定量的な要素と顧客からの評判や経営陣の能力など定性的な要素、その両方を見よう。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 定量的な要素とは売上や利益といった数字のこと、定性的な要素とは数字に表れない評判や経営者の手腕のことだ。バフェットが本社を訪問したのは、まさにこの「数字に表れない部分」を確かめるためだった。

 数字と評判の両方を見る。この当たり前のようで難しい作業こそが、勝つ投資家の習慣なのだろう。

あと一歩が差を生む

 大きな運用会社のアナリストでさえ、小さな保険会社の幹部をわざわざ訪ねたりはしない。彼らは年次報告書や業界レポートを読むだけで満足しがちだ。

 だからこそ、ほんの少し踏み込むだけで、私たちは専門家よりその会社にくわしくなれる。本書が伝えるのは、特別な才能ではなく誰にでもできる地道な努力の価値なのだ。

 さらに本書は、長く持つことの大切さも教えてくれる。バフェットはガイコ株を約5000ドルの利益で売ったが、もし20年持ち続けていたらどうだったか。

もし彼がその後二十年間、株式を保有したまま釣りをしているだけで、一九六〇年代後半には百三十万ドルで売れていたのだ。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 この事実は、良い会社の株を焦って手放すことの代償を物語っている。バフェット自身も、これは痛みとともに学んだ教訓だったと本書は記す。

 焦って利益を確定するより、価値ある会社をどっしり持ち続ける。それが遠回りに見えて、最も賢い近道なのかもしれない。