会社からChatGPTのアカウントは配られたけれど、いまいち使いこなせていない
――そんな人は少なくない。だが、同じAIツールを同じタイミングで導入しても、「化ける人」と「終わる人」がはっきり分かれるという。1000社・3000名のビジネスパーソンの“AIとの出会い”を間近で見てきた、株式会社ガラパゴス代表・中平健太氏の著書『AIで終わる人 AIで化ける人』から、その分かれ道となる「思考の癖」を紹介する。

AIで終わる人Photo: Adobe Stock

「自分の頭で考える」が、罠になる時代

「経験豊富な自分のほうが正しいに決まっている」
「過去のデータを見れば、答えはもう出ている」

日々の仕事の中で、そう感じてしまう瞬間はないだろうか。

自分の頭で考える。
多くの経験を積み、自分らしい答えを出す。
それはビジネスパーソンとして当然の美徳とされてきた。

だが、本書はその常識に静かに警鐘を鳴らす。

多くの経験を積み、たくさんの正解を選んできたからこそ、
自分の頭の脳みそに答えがあると信じきっている。

もしかしたらそれは、あなたの脳を「情報過多」の現代で孤立させ、淘汰される、
「自脳思考」という名の“罠”なのかもしれません。


一方で、これからの時代に評価され、生き残っていくのは「他脳思考」の人ではないでしょうか。

――『AIで終わる人 AIで化ける人』より

長年の成功体験があるベテランほど、「答えは自分の中にある」と信じ込みやすい。
だが情報があふれるAI時代には、その自負がかえって視野を狭め、淘汰の原因になりうるという指摘だ。

ベテランが負け、入社5年目が勝った理由

本書には、象徴的なエピソードが登場する。

20年のキャリアを持つベテランのマーケターAさんは、AIが出した案を「こんなの使えない」と一蹴し、自分の成功パターンだけで広告を作り続けた。
一方、入社5年目のBさんは、AIが出した50案の中から「自分では絶対に思いつかなかった切り口」を見つけ、それをたたき台に磨き上げた。

結果、Bさんの広告はAさんを大きく上回る成果を出した。
Aさんに足りなかったのは、スキルではない。

「自分の頭の外に正解があるかもしれない」と思えるかどうか。

著者は、その一点だけが両者を分けたと言い切る。

自分の脳だけは、辞書だけの調べ物

自分の経験と知識だけに頼る「自脳思考」に対し、他者やAIの知恵を積極的に“借りる”ことで思考を拡張するのが「他脳思考」だ。
それは単に人の意見を聞く受け身の姿勢ではなく、外部の脳を自分の一部のように使いこなす能動的なプロセスだという。

大量の情報があふれ、AIが爆速で答えを生み出す今、
自分の脳だけで戦うのは、まるでインターネットがあるのに辞書だけで調べ物をするようなものです。

AIや他者の脳を武器として使いこなし、これからの時代を軽やかに生き抜いていく。
この「他脳思考」こそが、あなたのキャリアをアップデートするための鍵です。

――『AIで終わる人 AIで化ける人』より

ただし、著者は「自分で考えるのをやめろ」と言っているわけではない。

無数の選択肢から本当に価値ある一点を見抜く力、
そして最後に覚悟を持って決める責任は、あくまで人間に残される。

AIに丸投げするのではなく、AIを“もう一つの脳”として使い倒す。
その発想の転換ができる人こそが、これからの時代に伸びていく。

(本記事は、『AIで終わる人 AIで化ける人』を一部抜粋し、作成したものです。)

中平健太(なかひら・けんた)
株式会社ガラパゴス 代表取締役社長
早稲田大学理工学部卒業後、プロセス改善コンサルティングファームを経て2009年に創業。100を超えるスマホアプリ開発などを行うなかでデザイン産業の課題に直面し、いち早くAI技術の研究開発をスタート。2019年にAIを活用したクリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」をリリース。同サービスはのべ1000社・3000名以上に導入され、企業の業務フローと、個人の思考や働き方に根本的な変革をもたらしている。「ICCサミット KYOTO 2022 カタパルト X」優勝など起業・スタートアップ関連の賞を多数受賞。テレビやウェブメディアでも広く取り上げられ、1万人超への講演実績も持つ。現在は累計約24億円の資金調達を実施し、AI技術の社会実装を牽引している。