「考えすぎが消えた」「悩まない人に変わった」と話題の一冊がある。全世界150万部突破・39か国刊行のベストセラー『STOP OVERTHINKING――思考の無限ループを抜け出し、脳が冴える5つの習慣』だ。ライター柴田賢三氏が本書の役立ちポイントをレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

突然、クマに遭遇した人がとっさに取る行動と「ストレス対処法」の意外な共通点とは?Photo: Adobe Stock

「グルルル」という低い唸り声

 熊が市街地に出没する被害が相次いでいる。

 テレビでは、熊に遭遇したら「大声を出したり、走ったりせず、ゆっくり後ずさりしなさい」と、繰り返し専門家が警告しているが、実際に実行できる人はどれほどいるのか。

 私は熊には出くわしたことはないが、週刊誌の記者時代、深夜の雑木林で野犬の群れに囲まれたことがある。
 一人で事件現場の写真を撮りに行かされ、重いカメラバッグを担いで帰ろうとしていたら、獣道の途中で「グルルル」という低い唸り声が聞こえたのだ。

 道の左右は、私の腰のあたりまで茂みがあり、相手の姿は見えない。

 ガサガサ、ガサガサ。グルルル……。

 私が歩くと、同じペースで茂みが揺れ、唸り声も響くが襲ってはこない。少し進むと、最初は右側の茂みだけにいた野犬が、左側の茂みにも複数いることが気配でわかった。

体が勝手に動いた

 ここまでくると、完全にパニックに陥る。危険な野生動物に遭遇した場合の対処法は、熊と同じだ。

 が、次の瞬間、体が勝手に反応した。

「うわぁあーーーーー!」

 カメラバッグを放り出し、大声で叫びながら走り出したのだ。

 幸い、野犬が追ってくることはなく、雑木林から抜け出すことができたが、あのときの恐怖は今でも忘れない。

 日常生活でわれわれを悩ませるストレスや不安にも、同じことが起こる。
「悩んじゃダメだ」とわかっているのに、ぜんぜん頭と体が言うことをきかない。
 考えすぎた結果、疲れ果て、ひどい人は抑うつや不安症まで抱えるようになる。

 全世界150万部突破のベストセラー『STOP OVERTHINKING』の著者ニック・トレントンは、こうした心理を次のように解説している。

「闘争・逃走反応(ピンチに陥ったとき、闘うか逃げるかをとっさに判断する反応)」は、人類が生き延びるために進化させてきたメカニズムだ。
――『STOP OVERTHINKING』​より

 ニックは、常に悩める読者に寄り添ってくれる。
「あなたが考えすぎるのは人間なら当たり前の反応だ」と示した上で、いくつかトライすべき解決法を記してくれている。

再び野犬との遭遇現場に戻った理由

 実は、野犬がいるとわかったとき、私は一瞬「闘争」も頭をよぎった。

 当時、空手を習っていた私の得意技はローキック。「一匹だけなら倒せるかもしれない」とバカな考えも抱いたのだ。結果として「逃走」を選んだが、どちらにしても大けがを負っていたかもしれない。

 雑木林を抜け、駐車場の社用車に飛び込んで落ち着くと、カメラバッグを置いてきたことに気づいた。若かった私は、自分の身の危険より、カメラ一式を捨てたことを上司に叱られることが怖く、再び野犬との遭遇現場に戻った。

 すでに野犬の群れは姿を消していて事なきを得たが、あのときニックの本を読んでいれば、朝を待って仲間を呼んだり、それこそ熊撃退用のスプレーを用意するなど、いくらでも対処法を思いついていたかもしれない。