本物の富裕層がスイートルームを避ける
「意外な理由」とは?
なぜ、本物の富裕層はスイートルームを避けるのか。
それは、スイートに泊まることが、館内宿泊客の「ヒエラルキーの頂点に立つこと」を意味するからです。
ホテルの客室には、標準ルームから上層階の眺めの良い部屋、エグゼクティブフロア、そしてスイートへと、価格と豪華さに応じた階層構造があります。スイートは、その頂点です。
哲学者アラン・ド・ボトンは、著書『地位不安』の中で興味深い指摘をしています。
地位への不安は、社会の底辺にいる人だけのものではない。頂点にいる人にも、不安は強く宿るというのです。
地位に関わらず、人は自分と同じレベルだと感じる集団の中で、常に比較に晒され続けます。ヒエラルキーの“頂点”にいる富裕層にとって、その地位を失うことのプレッシャーは非常に大きいものだといえるでしょう。
スイートに泊まるということは、まさにこの比較の構造の中に自ら身を置くことを意味します。
本物の富裕層は、長年の経験の中で、この構造そのものから「降りる」場所を求めるようになっていくのです。
これは、お仕えしてきた現場で、私自身が繰り返し感じてきたことです。
「いつまで、こうしてスイートに泊まり続けられるだろうか」「もし次に通常の客室に泊まることになったら、それは自分の価値が下がった、あるいは没落した、ということになるのではないか」――スイートに通された方の頭の隅には、そういった不安が静かに居座っています。
最上の部屋に泊まるという行為は、無意識のうちに、「次もここに泊まり続けなければならない」というプレッシャーを、ご本人に課してしまうのです。地位の頂点に立つことには、私たちが思っている以上に心理的な負荷がかかります。
本物の富裕層に選ばれている
「スモールラグジュアリーホテル」
では、富裕層は、どんな場所へと流れているのでしょうか。
その答えの一つが、「スモールラグジュアリーホテル」と呼ばれる、客室15室未満の小規模な高級宿です。
普通のホテルとの決定的な違いは、「一般の部屋」と「スイートルーム」という階層的な区分けが、最初から存在しないこと。全ての部屋が、スイートに匹敵する広さと装備を備えています。







