中島聡氏中島聡氏 写真:徳間書店提供

家事をこなし、買い物まで代行してくれる人型ロボットが無料で手に入る――そんな未来が訪れたら、誰もが歓迎するだろう。しかし、その便利さにはどんな代償があるのか。エンジニアの中島聡氏が、近未来小説を通してAI時代の新たなリスクを描き出す。※本稿は、エンジニアの中島聡『2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。

人型ロボットのおかげで
家事から解放された人類の「未来」

 HELP-01が我が家にやってきて、もう3年になる。それまでは仕事から帰ってきても、そこから「第二の仕事」が待っていた。掃除、洗濯、夕食の準備。それをこなすだけで、2人とも毎日疲れ果てていた。週末になれば、平日に溜まった家事を片付けるだけで、気づけば半日が終わってしまう。そんな日々だった。

 でもいまは違う。HELP-01が、面倒な家事をすべて引き受けてくれる。仕事から帰ると、部屋は整い、温かい食事がすぐに並ぶ。

「何もしなくていい」というのもずいぶん楽だが、「疲れたまま何かを判断しなくていい」ことが、これほど楽だとは思わなかった。

 俺たちが子どものころに「未来」として描かれていた家事からの解放。それが月額5万円のHELP-01のリース代と引き換えに現実のものとなっていた。

 人型ロボットのいる生活は、控えめに言っても最高だ。一度この快適さを知ってしまうと、もうロボットのいない生活なんて想像もできない。ただ、その「快適な暮らし」を維持するコストが、じわじわと家計を圧迫していた。

「もう少し安くならないかなあ……」とため息がもれる。