中島聡氏 写真:徳間書店提供
今や生成AIは単なる検索ツールや作業支援ツールではなく、人々の悩みに寄り添う「親友」のような存在になりつつある。しかし、その便利さの裏には、価値観や思想が知らぬ間に形づくられてしまうリスクも潜んでいる。エンジニアの中島聡氏が、AIと人間の新しい関係を考察する。※本稿は、エンジニアの中島聡『2034 未来予測――AI(きみ)のいる明日』(徳間書店)の一部を抜粋・編集したものです。
なんでも相談できるAIは
親友になれるのか
AIが提示するのは、健康データや行動履歴に基づいた、常に「正しい」答えです。しかし、人間はいつも正しさや最適解を求めて生きているわけではありません。二日酔いをして二度とお酒は飲まないと誓った数日後に、懲りずにまた大量に飲酒をして自己嫌悪に陥る。締め切りの地獄を味わったはずなのに、性懲りもなくまた作業を先延ばしにしてしまう――。
私たちは、そんな理屈では割り切れない弱さや矛盾を抱えながら生きる生き物です。
本来、生身の人間関係には「ハンドルの遊び」のような、いい意味でのいい加減さがあるものです。相手の小さな嘘に気づかないふりをしたり、喉まで出かかった正論をあえて飲み込んで「大変だったね」とだけ言ってみたり。そうした曖昧さや、感情の揺らぎを受け入れ合うことで、私たちは救われています。
ところが、AIにはこの「遊び」がなかなか通じません。開発者やユーザーが意識して設計しなければ、常に最適解を突きつけてくることになります。







