サイボーグ化した兵士のイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

これからは、AIが人を管理し、ロボットが戦う。かつて国家だけが担ってきた統治と軍事の機能は、テクノロジーによって再編されつつある。その最前線にいるのが、イーロン・マスクと中国共産党だ。立場は正反対でありながら、両者は「AIによる統制」と「ロボットによる戦力」という同じ方向を向いている。現代中国研究家の津上俊哉氏、中露関係を専門とする熊倉潤氏、そしてロシアの軍事評論家である筆者による鼎談から、新しい権力の輪郭を読み解く。※本稿は、小泉 悠『世界の大転換』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。

国家が溶けた世界の
主役は誰になるのか

津上俊哉(以下、津上) 世界の主権国家はどこも財政が負債でパンパンで、物価上昇の時代に力が衰えていくのは避けられない。主権国家がシュリンクした「新たな空白」を誰が占めるのかと言えば、まずはGAFA(Google、Apple、Facebook[現Meta]、Amazon)というアクター。そして宗教は最古のアクターだから間違いなく参入します。さらにNGO(非政府組織)みたいな新しいアクターがパワーを占めるかもしれない。

小泉悠(以下、小泉) 国民国家という17世紀以来のシステムが溶解に向かい、国家は「ワン・オブ・ゼム」になって、他の者が力を持つという議論は、90年代、2000年代にも盛り上がりました。

 その後コロナ禍で「意外と国家って強いな」と揺り戻しがきましたが、「それなら国家の賞味期限はあと50年?100年?」というと難しい感じはします。

津上 主権国家のもう1つのリスクは「代議制民主主義はもうアカン」ではないでしょうか。これほど分断が進むと、代議制民主主義にはまともなことはできない。

小泉 めちゃくちゃなことを言って注目を集めた人が選挙に通ってしまう、従来型の政治家も次の選挙で負けないために過激なことを言わないといけない、というのは世界的な現象ですね。