【大人の教養】「世界史って何から読めばいいの?」→代ゼミ講師の答えが深すぎた
世界史をもう一度学び直したい。そう思って本を探すと、「一気にわかる」「三時間でわかる」といった入門書が目に入る。もちろん、全体像をつかむには役に立つ。だが、そこで終われば、知識はただの暗記にとどまってしまう。では、大人が世界史を学び直すなら、どんな本を選ぶべきなのか。代ゼミの世界史講師がすすめるのは、事実を並べるだけでなく、背景や概念を丁寧に扱い、読者に考える余白を残してくれる「あの本」だった。

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「世界史って何から読めばいいの?」→代ゼミ講師の答えが深すぎた

 世界史をもう一度学び直したい。そう思ったとき、多くの人がまず手に取るのは、「世界史が一気にわかる」「三時間でわかる世界史」といった入門書かもしれない。もちろん、そうした本にも大きな意味はある。世界史の全体像をざっくりつかむには、読みやすい入門書は役に立つ。しかし、そこで終わってしまうと、どうしても表面的な理解にとどまってしまう。

 では、ビジネスマンが世界史を学び直すなら、どのような本を選べばいいのだろうか。代々木ゼミナール講師の伊藤敏先生がすすめるのは、概念を丁寧に扱っている本である。反対に、事実の羅列だけの本や、著者の主張が強すぎる本には注意が必要だと言う。

世界史を学び直す人が「選んではいけない本」とは?

「これはあくまで僕の個人的な意見なんですけど、書き手の主張が強すぎないほうがいいと思うんですよ」

 著者の主張がはっきりしている本は、たしかに読みやすい。刺激的で、面白く、読んでいて飽きない。だが、それをそのまま受け取るだけでは、著者の思考をコピーしているにすぎない。大切なのは、読んだ内容を土台にして、自分自身で考えることだ。

「書き手の主張が結構際立っていると、確かにそれはそれですごく読みやすいですし、めちゃめちゃ面白いんですけど、ただ、それはその人の思考をそのままコピーしているだけじゃないですか」

 もちろん、誰かの考え方をなぞること自体が悪いわけではない。最初は、すぐれた書き手の視点を借りることも必要だ。だが、そこで終わってしまうと、歴史を自分の頭で考えるところまでは届かない。伊藤先生が求めるのは、読んだことをそのまま受け入れるのではなく、それを足場にして、「自分ならどう考えるか」まで進むことだ。

「受け取ったそのコピーの部分を土台にして、さらに皆さん個々人で考えた時にどうなるか、というところまでつなげてほしいですね」

 その意味で、著者が一方的に善悪や評価を断定する本よりも、読者に判断を委ねてくれる本のほうが、世界史の学び直しには向いている。歴史を材料にして、自分で考える余白があるからだ。

「変に『これはいい』とか『これは悪い』みたいに言ってしまうんじゃなくて、皆さん自身がどう判断するか、読者に判断を委ねているような、そういう本が僕はいいんじゃないかなと思いますね」

世界史講師がおすすめ! この本を読もう!

 では、具体的にはどのような本がよいのか。伊藤先生が挙げるのが、中央公論新社から刊行されている「世界の歴史」シリーズである。『ギリシアとローマ』や『大モンゴルの時代』のように、国や地域ごとの歴史を、その分野の専門家が丁寧に描いたシリーズだ。

 このシリーズのよさは、単に出来事を年代順に並べるだけではなく、その地域がどういう場所なのか、なぜそのような歴史が展開されたのかを、背景から理解できるところにある。たとえばイギリス史であれば、まずイギリスとはどのような地域なのか、というところから始まる。その地理的条件や社会の成り立ちを踏まえたうえで、だからこそこのように歴史が展開していったのだ、という流れが見えてくる。

「その分野の専門の先生方、研究者の方々が書かれているので、まず『ギリシアってどんな地域なのか』から始めて、こういう感じで歴史が展開されるんだ、というところまでわかるんですね」

 世界史を学び直すとき、最初から難しい本に挑む必要はない。入口として、「三時間でわかる世界史」のような本を読むのも悪くない。まずは世界史全体の輪郭をつかむ。そのうえで、関心を持った地域やテーマについて、もう一段階深く掘り下げていくことが大切だ。

 世界史の学び直しで一番必要なのは、知識を増やすことだけではない。覚えた知識をどうつなげるか。出来事の背景や因果関係をどう押さえるか。概念を使って、バラバラの用語をどう整理するか。その積み重ねによって、世界史は単なる暗記科目ではなく、現代を考えるための知的な土台になる。

 伊藤先生の言う「理解」とは、出来事を知っていることではない。なぜそうなったのかを考え、次に何が起きるのかまで見通そうとすることだ。世界史を学び直すなら、まずは暗記からではなく、理解から始める。そのためには、事実を並べるだけの本ではなく、概念や背景を丁寧に扱い、読者に考える余白を残してくれる本を選ぶことが大切だ。

(本稿は『地図で学ぶ「深読み」世界史』著者へのインタビュー記事です)