株主還元に積極的な企業は、市場で高く評価される傾向があります。自社株買いの発表をきっかけに株価が上昇することも珍しくありません。では、自社株買いは、なぜ株価にプラスと考えられるのでしょうか。「株主にどのくらいのメリットを生むか、おおよその見当をつける方法がある」と話すのは、2000億円超を運用した元ファンドマネジャーで、楽天証券の窪田真之さん。本稿では、自社株買いで株価が上がる仕組みを解説します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

株価が上がりやすい銘柄にある「1つの共通点」とは?Photo: Adobe Stock

自社株買いで、なぜ株価が上がる?

 株主還元に積極的な企業は、市場で高く評価される傾向があります。増配や自社株買いの発表をきっかけに、株価が上昇することも珍しくありません。

 ただし、株主還元で重要なのは、「発表された」という事実だけでなく、その施策が投資家にどれくらいのメリットを生むのかを理解することです。

 今回は、株主還元策の中でも代表的な「自社株買い」の仕組みを解説します。

 自社株買いとは、自社が発行している株を買い戻すことです。たとえば、「NTTがNTTの株を買う」のが自社株買いです。

 自社株買いのメリットを「買いが入る」という短期的な材料と捉えている人もいます。確かに「自社株買い」を発表した企業の株価が、短期的に大きく上昇することもあります。

 ですが、企業が自社株買いをする目的は、短期的に株価を押し上げるというよりも、「1株当たり利益(EPS)を増やすこと」で、株主に還元するためです。

自社株買いがあると、株主の分け前が増える

 企業が自社株を買い戻すと、発行済株式数が減ります。利益の総額が変わらなくても、利益を分け合う株数が減るため、1株当たり利益は増えます。

 窪田さんは、著書の『株トレ ファンダメンタルズ編』の中で、次のようにわかりやすく解説しています。

 40個のケーキ(企業の利益)を10人の株主で分けると、1人当たり4個ずつ受け取れる。ここで企業が自社株買いを行い、株主2人の株を買い取ったとする。ケーキは40個のままだが、分ける株主は8人になるため、1人当たり5個ずつ受け取れる計算になる。

 このように、自社株買いとは利益そのものを増やすのではなく、「1株当たりの取り分」を増やす仕組みなのです。

自社株買いで株価は何%上がる?

『株トレ ファンダメンタルズ編』で紹介されているモデルで考えてみましょう。

 財務内容が良好で、安定した収益力を持つA社は、2026年5月7日の取締役会で、次のような自社株買い(自己株式の取得)を決議したと発表しました。

 予定どおり上限の3,000万株を取得した場合、A社の株価は理論上、何%上昇すると考えられるでしょうか。

 ① 0% ② 約2% ③ 約4%

自己株買いで株価は何%上昇する?自己株買いで株価は何%上昇する?

 正解は「② 約2%」です。

 A社は、「発行済株式総数の2%に当たる、3,000万株を上限として自社株買いを実施する」と発表しました。

 仮に予定どおりすべて取得されると、発行済株式数は2%減少します。これまで100人で分けていた利益を98人で分けるということです。

 企業の利益の額が変わらなければ、1株当たり利益(EPS)は約2%増加します。

 また「株価=PER×EPS」なので、加えて、PERが変わらないと仮定すれば、株価は理論上は約2%上昇します。

 自社株買いのニュースを見たときは、「いくら自社株を買うのか」だけでなく、「発行済株式数が何%減るのか」に注目してみてください。それが、株主価値がどれだけ高まるかを判断する重要なポイントになります。