『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク
三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。今回は、転職で「安く買い叩かれる人」が、面談で口にするNGワードについて解説する。
転職活動とは「自分の値段を知る」行為
50歳の機械メーカーで働く設計エンジニア・斉藤良男は、現在転職活動中です。しかし、ある日、転職エージェントの担当者である井野真々子から届いたメールを見てドキッとします。
そこには、「斉藤さんが本当に転職をしたいのか、その真意を確かめたいのです」と書いてあったからです。
後日、井野との面談に来た斉藤は、こう話します。
「それからいろいろ考えて、自分は本気で転職したいワケじゃないんじゃないか……と」
「じゃあ…… どうしたいんだと突き詰めて考えたら……ふと思ったことがあって、要するに…… 誰かにきちんと評価されたいんです。現在自分の持っている能力を客観的に第三者から鑑定してほしいんです」
つまりは、転職活動を通して、「私は社会の役に立てる人材なんだ」「私のことをぜひ採用したいと欲しがる企業はたくさんあるんだ」という実感を得たい、ということですね。
転職活動はある意味で、「自分の市場価値を知る」行為だと言えます。
労働市場に自分という人材を売りに出したときに、果たしてどんな値が付くのか? という期待感、あるいは漠然とした不安を持っている人も多いでしょう。
「自分の市場価値を教えてほしい」は危険
しかし、このとき、市場価値の捉え方を間違えるとかなり危険だと私は思います。
作中でも、斉藤の転職活動は極めて難航しており、転職エージェントからも「斉藤さんの希望に応えることは大変難しい状況」と言われてしまっています。
「自分の市場価値を他人の目線で教えてほしい」という受け身の発想で転職活動をする人には、高い値段が付くことはありません。たいていは、希望条件に届かない微妙な求人しか見つからないなど、残念な結果になってしまいます。
なぜかというと、転職活動とは「自分自身を労働市場に売りに出す」という意味で営業活動の一種だからです。
たとえば、「市場」のイメージとして、港町の魚市場における競りの場面を想像してみてください。どんなに見栄えの良い大物が入荷したとしても、それをただポンと置いておけば自動的に最初からいきなり高値が付く、というわけではありません。
「ウチはいくら出すぞ」「ウチはここまで出せる」と、たくさんの買い手が次々に競って、どんどんヒートアップして提示価格を更新していかない限り、そう簡単に良い値段が付くことはないでしょう。
もちろん、素材自体の良さも大切なのですが、それと同じくらい「売り手の交渉力」や「競りをコントロールするスキル」といった営業力が試されているわけです。
自分という人材を「最高値で売る」努力
転職活動も同じで、「自分という人材をいかに高値で売り込むか」という努力と準備をしっかり頑張らないと、なかなか高年収のオファーが出ることはありません。
「自分の市場価値を知りたいんです」「私の能力を第三者に鑑定してほしいです」と言っている人は、あっという間に安値で買い叩かれてしまいます。なぜなら、転職活動とはお宝の査定番組ではなく、人材獲得ビジネスだからです。
企業側は必ずしも、「本人の市場価値に見合う高い価格で買いたい」なんて考えてはいません。むしろ逆で、「できるだけ優秀な人材を、できるだけ安い値段で有利な条件で手に入れたい」と思っている場合の方が多いです。
その方が、企業は中途採用の人件費を抑えられるし、年収条件が折り合わずに採用が見送られる可能性も低くなるでしょう。内定獲得のハードルも下がるので転職エージェントにとってもプラスになります。
こういった力学をきちんと意識したうえで、「自分の市場価値を誰かに査定してほしい」という他力本願ではなく、「私には確実に年収1200万円の価値がある。なぜならば……」と力強く自分を売り込む姿勢が大事なのだと、私は考えています。
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク







