『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク
三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。第17回では、転職を成功させるために必要なものについて解説する。
全員が右を向いたときは、左を向け
「矢島……俺をがっかりさせるな。“まとも” なんて言葉使ってるようじゃ大きな仕事をする大人にはなれないぞ」
弁護士事務所を経営する桜木建二は、かつて龍山高校で指導した教え子の一人である大学生・矢島に対して諭すように言います。
「大きな成功を得るには “まとも” じゃないこと、世の中の人とは逆の発想をしなくてはならない。わかりやすくいえば全員が右向いたときは左を向け! ということ」
これは、やや極端な主張ではありますが、ある意味で的を射ています。
たとえば、現在は空前の投資ブームで、多くの人が「NISAでインデックス投資!」「S&P500に満額入れれば長期で儲かる!」と声高に叫び、世の中の大きな流れに乗ろうとしています。
しかし、実際にはいくらNISAを活用したところで、それだけで誰もが将来お金持ちになれるわけではありません。NISAは確かに良い制度です。私も活用しています。ただ、世間の「NISAブーム」はやや過剰に煽られている気がしていて、まるでNISAをやれば誰でも簡単にお金持ちになれるような大げさな言い方をしている人までいます。
桜木の言う「全員が右を向く」という状態が、この例でいう「NISAでオルカンやS&P 500に積み立て投資をする」ことです。
もちろん、この流れに真っ向から逆らう必要はないのですが、周りと同じことをするだけでは、周囲を大きく上回る成果を得るのは難しい、というのが桜木の趣旨なのでしょう。
「周りと違う行動」を取るのは難しい
桜木は、さらに続けます。
「社会は常に中道を行くわけではない。極端から極端へと揺れ動いている。そして成功は多勢の中にはない。反対側にある」
「では...... 反対側に向かう時必要なもの…… それは勇気だ……。ここぞという時、思い切って反対側を向ける人間が常に勝つ」
この印象的なセリフは、名作『ドラゴン桜』の主人公であり、元暴走族リーダーから弁護士事務所の所長という異色の経歴を持つ彼だからこそ言える言葉なのかもしれません。
みんながやっているのと同じことをしても、大きな成功を得ることはできない。
そんなことは、おそらく誰でも知っています。ごく普通に生きていたら、ごく普通の成果しか手に入らないのは当然です。
周りと同じことだけやっていたら、周りと比べてより大きな成功が手に入るはずはありません。それでも、日本人は伝統的に「空気を読む」ことが重視される場面も多いので、なかなか他人と違う行動はできません。全員が右を向いているときに、左を向くことができる人はほとんどいないのです。
転職も、その一例でしょう。多くの日本人会社員は転職に対してかなり消極的であり、「なるべくなら転職はしないに越したことはない」という価値観もいまだに根強いように感じます。
だからこそ、周りがあまり手を出そうとしない「転職」という世界に、勇気を出して一歩足を踏み入れることができる人が、大きな成功を手にすることもあるのだと私は考えています。
かつて、私は『転職する勇気』(扶桑社/育鵬社)という小説仕立てのビジネス書を出版したこともあります。実は、転職を成功させるために一番大事なのは、勇気なのかもしれません。
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク







