『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク
三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。第16回では、転職しても通用する人の「仕事力」について解説する。
「仕事ができる」とは何か?
転職代理人・海老沢康生は、30代・40代・50代の転職について、人材を3パターンに分類しています。
A:優秀でどこへでも転職でき、どこでも活躍できる人
B:優秀だが、転職するとその優秀さが発揮できない人
C:優秀ではないので転職しない方がいい人
そのうえで、Aについて「こんなサラリーマン、現実にはあまりいない」と言います。
「社内で優秀と言われる人のほとんどがBに属するだろう。今は優秀だが、転職したら優秀さを発揮できない。では、AとBの違いは何か? それは、仕事とは何か……に関係している」
何だか深い問いになってきましたが、海老沢の持つ解は、単純明快です。
「仕事とは人間関係。人間関係が円滑な人は仕事ができる」
その意図は、自分一人の力だけですべてを解決することはできなくても、周りに相談したり誰かの力をうまく借りたりすることによって、結果的にスムーズに仕事が回っていく、ということです。
「この件は、たぶん人事部のあの人に聞けば何か分かるかも」
「昨年度の担当者は○○さんだったから、軽く聞いてみよう」
「同期の○○さんなら仲良くしてるから、つないでおくよ」
こんな風に、社内の人脈を使って円滑にタスクを処理していく人は、周りから「仕事ができる」と高く評価されることでしょう。
人脈は大事だが、人脈に頼る人は自滅する
ただし、この働き方はある意味で「諸刃の剣」だと私は思います。
マンガの中で海老沢が述べている通り、タイプ:Bに属する人材は「優秀だが、転職するとその優秀さが発揮できない人」だからです。
つまり、長年にわたって築いてきた社内の人脈があってこそ「仕事ができる」と評価されていて、他の会社、他の業界に移ってしまった時点で原動力を失うからです。
この物語が次回以降どういう方向に進んでいくのかは分かりませんが、私の第一印象としては「Bに属する人材は転職できない」です。
そもそも、作中のA~Cの切り分けは「優秀かどうか」を軸にしているため、かなり極端で一面的なものではありますが、それはいったん置いておきましょう。
私が言いたいのは、「社内人脈が自分の武器です」と面接でアピールしたところで中途採用の内定はもらえない、ということです。当たり前ですね。
仕事を進めていくうえで、人脈は大事です。関係者や同僚、上司との信頼関係があって初めて、良い結果を出せるようになります。それは紛れもなく事実です。
でも……
長年一緒に働いてきた上司が、突然、家庭事情や体調を理由に長期休職することになったら?
いつもお世話になっている取引先の担当者が退職して、新しい人に交代したら?
会社の大規模な組織変更により、未経験の部署に異動させられてしまったら?
これはすべて、社会人生活において十分あり得るシナリオです。
人脈は大事です。しかし、「人脈が自分の切り札だ」と思っている人は、その人脈を失った瞬間に丸腰になって戦えなくなります。
人間関係は不変ではないし、他人は自分の思い通りにコントロールできません。人脈もまた、未来永劫そのまま維持できるとは考えない方が無難です。
ビジネスパーソンとして本当の意味で強いのは、「あの人とは長い付き合いでいつもお世話になっているから…」ではなく「あの人はつい最近知り合ったばかりだけど、すごく頼りになるなぁ…」と思わせる人なのだと、私は考えています。
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク







