『エンゼルバンク』 (c)三田紀房/コルク
三田紀房作の転職マンガ『エンゼルバンク』を題材に、「転職デビル」の名で知られる転職アドバイザー・安斎響市氏が「転職のリアル」を解説する連載「『エンゼルバンク』で学ぶ転職のウソとホント」。第15回では、「頑張っても評価されない」ときに考えるべきことについて解説する。
「仕事を頑張った」だけでは、報われない
大手商社の江戸山商事で働く、入社10年目・32歳の北川久美子は、年下の同僚・石原が上司から褒められている様子を見て、思うところがあるようです。
「よくやった石原。お前の見積もりのキメ細かさが評価されたみたいだ。あとで二人で祝盃あげよう」
「(なんで? 石原君と私がコンビでやったはずよ)」
「(それも見積もりはほとんど私一人で作成した)」
「(休日出勤や徹夜までして仕上げたのは私なのに。どうして石原君一人だけ評価されるの? 何故私には何もないの? 私が一般職だから?)」
裏方で働く一般職の自分の努力はまったく報われず、表で目立つ仕事をしている総合職の社員だけが称賛を手にしている。本当は、彼自身の成果ではなく、私がいたからこそ出せた成果のはずなのに……。
このような社内評価の不公平さ・不透明さに直面して、不満を持ったことがある人は多いのではないでしょうか?
社内評価には、「意図」がある
残酷な話ですが、仕事を一生懸命頑張れば、その分だけ評価してもらえる…… ということは現実にはほとんどありません。
マンガに出てくる通り、「一般職だから」評価されない人もいるでしょう。
同様に、「契約社員だから」「派遣社員だから」頑張っているのにあまり評価につながらない人もいることでしょう。
場合によっては「若手だから」「新人だから」というだけで正当な評価をしてもらえないことさえあります。
もちろん、雇用形態などを理由に不当に評価されることがあっていい、という話ではありません。
ただ、個々の会社には、その組織特有の力学があり、評価基準は様々です。「仕事を真面目に頑張っているから」というだけで評価されるほど、世の中は単純ではないのです。
たいていの場合、社内評価には「意図」があります。
たとえば、作中に出てくるように、若手の営業職社員に対して、成果を出したことを褒め称えるのは「今後もっと頑張って売上を積み上げてほしいから」「さらに成果を出して来期の昇進試験に推薦したいから」などの裏の意図があるかもしれません。
このとき、裏方としてサポートを行う一般職の社員を褒め称えても、次の成果や、来期のチーム内昇進にはつながりません。
「頑張っているから褒められる」のではなく、「その人を褒めることでメリットがある」から褒めるのです。それも管理職の仕事の一部ですし、世の中の上司はそうやって動いています。
この意味で、「毎日こんなに頑張っているのに……」と嘆くのは、30代の社会人としてはやや幼稚な態度だと私は思います。褒められたいのであれば、「自分を褒めるメリットがある」環境や状況を自分の手で作り出すしかありません。
その後、北川は転職アドバイザーの井野からベンチャー企業の社長秘書への転職を提案され、激怒します。
評価してもらえない場所に留まる必要はない
もちろん、たった一人の意思で周りの環境や評価基準を変えるのは、ほとんど不可能です。組織の力学はそう簡単には覆りませんし、自分の置かれた立場はなかなか変更してもらえません。
なら、身を置く場所を変えるしかない……と転職を志す北川の態度は、極めて正しいです。他人は変えられませんが、自分は変えられます。どこで誰と働くかは、いつでも自由に選ぶことができます。
今の職場でこれ以上努力をしても、ほとんどリターンがないと知りながら、不平不満を抱いたまま働き続ける必要はありません。さっさと次の職場を探すのが吉です。
明らかに自分があまり歓迎されていない結婚式や同窓会に、招待状をもらったからと言ってわざわざ出席する必要はないのと同じです。
「まだ努力が足りないのか」「もっと頑張れば評価してもらえるかも」と、変な方向にこじらせると泥沼にハマるので、そうではなく、「自分が輝ける場所を自分で選ぶ」姿勢が大切だと、私は思います。
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク
『エンゼルバンク』(c)三田紀房/コルク







