「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。
「なぜか使えないと思われている人の共通点」とは? ライター照宮氏に寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

「なぜか使えない」と思われている人のたった1つの共通点とは?Photo: Adobe Stock

新人の頃、ベテランの言葉を信じて疑わなかった

転職先の出版社は、小さな会社だった。
出版業界の商慣習は独特で最初は戸惑った。

その中でひとつ、「倉庫への発注はFAXでしかできない」というルールがずっと引っかかっていた。
いくら旧態依然とした業界とはいえ、オンラインに対応していないことなんてあるのだろうか。

元々その業務をやっていたベテランの営業の人にやんわり聞いてみたことがある。
でも回答は、「FAXだけ」。
コロナ禍で在宅勤務になったときも、FAXを送りにコンビニに出向く。どう考えても非効率だ。それでも誰も疑わなかったし、結局、私も従っていた。

伸び悩むベテランには「共通点」がある

一代で時価総額1000億企業をつくりあげた木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』の中でこう述べている。

1000の問いに答えるには1000通りの「問いと答えのセット」を知らなければ正しい答えを出せない。
今までにない問いに対して新しい答えを生み出せず、「経験の数=できる仕事の数」になっています。

――地頭スイッチ』より

オンラインでも発注できると判明したのは、私が出版社を辞めた後のことだ。
あの営業さんにとって、それは経験の外にある答えだった。

長年FAXでこなしてきたから、「発注=FAX」は疑う余地のない当然のことだったのだろう。だからオンラインでの発注を模索してこなかったのだ。

経験を積むとはそういうことだ。
過去にうまくいったやり方を蓄積していくから、同じ場面では迷わず動ける。
でも経験したことがない状況に陥ったとき、「できない」と判断してしまう。

経験があればあるほど、その「できない」は疑いようのないものになっていく。
それを一度自分の頭で問い直せるかどうか。
そこに、経験を積みながらも新しい答えを出せる人とそうでない人の差があるのかもしれない。